The previous night of the world revolution~T.D.~
一体、何事が起きているのかと言うと。

「ルーチェス君っ、お疲れ様〜」

「あぁ、全然疲れてませんよ。歯応えのない相手だったので。軽いスポーツを楽しんだ程度です」

「すご〜い!」

ルーチェス殿は、彼の奥さんのセカイ殿と、仲良くお喋りしていらっしゃった。

確かにルーチェス殿は、汗一つかいていない。

息が上がっている様子もない。

対する俺は、

「坊っちゃん、大丈夫ですか?」

「…あぁ…」

ユーレイリーの手を借りて、ようやく起き上がり。

これまたユーレイリーが用意してくれた、乾いたタオルで全身を拭かなければならないくらい、汗びっしょり。

おまけに。

「お怪我は…」

と、心配して聞かれる始末。

しかし、その心配は無用だ。

「してない」

「で、ですが…木剣とはいえ、あれほど…その…激しい戦闘をされたなら…」

ユーレイリー、はっきり言ってくれて良いんだぞ。

「あれだけフルボッコにされたのに、怪我の一つくらいしてるんじゃないのか」って。

でも、怪我はしていない。それは分かる。

全身の節々は痛むけれど、これは怪我ではなく、ただ筋肉を酷使したことによる筋肉痛だ。

あれだけの戦闘を繰り広げたのに、彼は俺の身体に、傷の一つもつけなかった。

対する俺は、本気で戦っても、ルーチェス殿に傷一つつけられなかった。

それだけ、一方的な戦いだったのだ。

彼が本気で俺を傷つけようと思えば、今頃俺は、両手両足を折られ、首を折られ、あの世行きだ。

木剣だろうと真剣だろうと関係ない。

あの太刀筋じゃ、俺なんて、道連れにしようと思っても出来ないだろう。

ルーチェス殿。

ルレイア殿の弟子であると聞いたときから、相当の使い手であるとは思っていたが。

まさか、これほどとは思わなかった。
< 394 / 820 >

この作品をシェア

pagetop