The previous night of the world revolution~T.D.~
「やれやれ。ルレイア師匠の一番弟子(笑)の名が泣きますね」

(笑)をつけないでください。

「そして、ルレイア師匠の言った通りでした」

「…え?」

ルレイア殿が…何を?

「ここに来る前、言ってたんですよ、ルレイア師匠。『あの元童貞、国造りや子作りに夢中で、絶対身体鈍りまくってるはずなんで、ここいらで鍛え直してやってください』ってね」

「…!」

「そんな訳なので、ルレイア師匠の『本物の』弟子として、手解きをしてみた次第です。見事に、あなたが鈍りまくってることが証明されましたね」

…ルレイア殿…あなたという人は。

本当に…よく分かっていらっしゃる。

確かに俺は、『青薔薇十字軍』の革命以来、戦場に立つということがなかった。

それまでは、何とか憲兵局に支配された国を解放しようと、その為には力が必要だからと。

ひたむきに、武術の鍛錬に励んできた。

しかし、革命が成功した後は。

最早戦う必要はなくなり、それよりも新しい国を建て直すことが優先だった。

国民達に安定した生活を保証すること、これが第一で。

憲兵局による旧体制からの脱却と、民主的な『青薔薇委員会』率いる新体制への移行。

国にとっても民にとっても必要な、外貨を稼ぐ為の観光事業の発展化。

そして今は、国内の教育機関を充実させようと尽力している最中。

武術の鍛錬など、久しく行っていなかった。

必要がなかったからだ。

勿論、国内での流血沙汰が一切なかった訳ではない。

新体制への移行の際、多少の諍いは起きた。

しかし、それは俺が出るまでもなく、国軍が鎮圧してくれた。

そして今では、すっかり新体制が板につき、ほんのちょっとした小競り合いさえなくなった。

あったとしても、警察で充分対処出来る範囲。

俺が先頭に立って、指揮を執る必要はなかった。

それ故に、剣の腕前は、落ちていく一方だった。

そんなこと、思いもつかなかった。

ルレイア殿の言う通りだ。

国造りに夢中で、自分自身の強さを磨くことを、すっかり忘れていた。

…しかし、一つだけ訂正させてもらいたいのは。

…ルレイア殿、俺、別に子作りに夢中になってはいませんよ?
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