The previous night of the world revolution~T.D.~
例えば、先程のアリューシャが良い例だ。

確かにアリューシャはれっきとした、『青薔薇連合会』の幹部だ。

彼のスナイパーとしての腕前は、俺でさえ狙われたくないほど。

しかし。

残念ながら、頭の方は、あまり褒められたものとは言えない。

こればかりは、幼少期から少年期にかけて、全く教育機関に通っていなかったことが原因で、アリューシャ自身が悪い訳ではないのだが。

王立ルティス帝国総合大学は、国内最難関と呼ばれている名門大学だ。

誰でも簡単に入れる、という学校ではない。

同じくスパイとして潜入することになる、私立ローゼリア学園大学もそう。

こちらは私学だが、これまた帝国総合大学に負けず劣らずの名門校。

これまた、入学するには相当頭が良くなければならない。

スパイとは、程よく目立ち、程よく目立たないことが何より重要だ。

怪しまれたら、スパイの意味がない。

何処にでもいる、集団の中で有象無象の一人でなければならない。

その中で、とても大学に入れるほどの教養がないものが、一人だけ混じっていたら。

当然大学側も、学生達も、不自然に思うだろう。

「コイツ、何でこんなに馬鹿なのに、大学に入れたんだ?何か不正があったんじゃないか?」と。

疑われたらもう駄目だ。スパイとしては何の役にも立てない。

つまり。

「スパイ役になれるのは、それなりに頭が良くなければ駄目ってことですね」

その点、ルーシッドは問題ないだろうな。

何せ彼は王族として、そこらの大学なんて、軽くあしらえるほどの高等教育を受けている。

そして…。

「そうだね。だから…うちでスパイ役として候補に挙げられるのは…順当に行けば、ルリシヤとルーチェス、それから…ルレイア、君だね」

アイズ直々からのご指名とは。

光栄だね。

「自分は外すんですか?アイズも行けるでしょう」

「私には無理だよ。私は元々、学校に行ったことはない。私が培った知識は、裏社会で必要な知識だけだ」

成程…そういえば、そうか。

アイズの出自も、あまり恵まれているとは言えなかったな。

彼は確かに賢いし頭もキレるが、それは裏社会でのみ通用するもの。

裏社会で育ったのだから、当然と言えば当然だが。

所謂、一般教養というものは、ほとんど学んでいない。

この中で、それを学んでいるのは…先程アイズが述べた三人のみ。

「私も…駄目だわね。学校…まともに行ったことないし、私は三人ほど賢くないもの…」

と、しょんぼりなシュノさん。

うーん…。

確かに、シュノさんでは、帝国総合大学や、私立ローゼリア学園大学は無理かもな。

同じ私立ローゼリア学園大学でも、こちらは女子大学が併設されていて、そちらなら若干偏差値が低いのだが。

それでも、シュノさんには難しいかもしれない。

何より、この場にいる約半数が、「学校に行ったことがない」というのが問題だ。

まぁ、俺も大学には行ったことはないのだが。

ついでに言うと、ルルシーは帝国騎士官学校に、二年間ほど在籍していたことはあるが。

それでも、国内最難関大学で、目立たずにやっていくには…若干の力不足。

その点。

貴族出身で英才教育を受け、腐れ帝国騎士官学校出身の俺と。

これまた貴族出身で英才教育を受け、腐れ学校に入学寸前だったルリシヤ。

そして、言うまでもなく国内で最もレベルの高い教育を受け、海外留学までしたブルジョアルーチェス。

この三人は、帝国総合大学でも、ローゼリア学園大学でも通用するだろう。

特にルーチェスとか。

多分、俺より良い教育受けてるよ。
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