The previous night of the world revolution~T.D.~
それどころか。

「…あいつ、どの面下げて来てんだろうな」

Aが、声を潜めるようにして、ボソッと言った。

Aの言う「あいつ」とは、言わずもがな、ルーシッドのことである。

「だよな。いつも反対意見ばっか口にしてる癖に」

「ちょっとは遠慮しろって感じ。何で来てんの?」

挨拶を返されるどころか、陰口叩かれてる始末。

ざまぁが止まりません。

そして、俺も今は「こちら側」なので。

「ですよね。しかも今日は、彼がいつも批判してる、共産主義団体の講演会なのに…」

「また、後で批判する為に聞きに来たんだろ。本当性根悪いよな」

そう。

今日、土曜日であるというのに、『ルティス帝国を考える会』のメンバー達が集まったのは。

ルティス帝国にある、とある共産主義団体が主催する講演会に、サークルメンバー全員で参加する為である。

全員とは言っても、強制ではないので、他に外せない用事のある者は、来ていないが。

俺が見る限り、『ルティス帝国を考える会』のほぼ全てのメンバーが参加しているようだ。

そして、漏れなくルーシッドもその一人。

いくら嫌われ者でも、一応『ルティス帝国を考える会』の一員であることに、変わりはないからな。

ひそひそ陰口叩かれながらも、参加する権利はある。

まぁ、確かにあれだけ反対意見ばっかり口にしておきながら。

講演会には参加するのかよ、と思われるのは当然だが。

それは嫌われ者ルーシッドの役割だから、ちゃんとこなしてもらわないとな。

ざまぁのバーゲンセール。

…そして。

「…皆!おはよう。全員揃ったみたいだし、出発しましょう」

側近達と何やら話していたエリミア会長が、パンと手を叩いて俺達に言った。

さぁ、これからいざ、電車に揺られて講演会場に出発である。
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