The previous night of the world revolution~T.D.~
それなのに坊やは、おかしなことを言っている。

あんたのやり方で国を変えようと思ったら、何百年どころか、何千年単位で待たなきゃ無理だぞ。

ルティス帝国が、一体何千年王制でやってきてると思ってるんだ?

そりゃ遥か昔、ルティス帝国に共産主義思想が持ち込まれてからというもの。

一部の人間が、常に共産主義化を求めてはきたけれど。

しかし、それが叶うことはなかった。

何故か?

簡単な話だ。ルティス帝国は、王制・帝国騎士団制で、国民の大半がそれなりの生活を出来たから。

こいつらが思ってるほど、王族も帝国騎士団も、無能ではない。

糞みたいな連中であることは確かだが、しかし案外と、無能ではないのだ。

だからこそ、ルティス帝国が建国されて以来、何だかんだ問題がありながらも、国を維持出来ていた。

ヒイラ坊やはずっと、箱庭帝国を引き合いに出してご自慢の持論を展開しているが。

そもそも、ルティス帝国と箱庭帝国を対等に並べて比べる、その前提が間違っている。

ルアリスには悪いが、そもそもの国力が違うのだ。

箱庭帝国は昔から、国土にも恵まれず、国外に対して優位に働く資源もなかった。

今でこそ、箱庭帝国は観光事業で栄えているが。

それだって、箱庭帝国の長きに渡る鎖国状態があったからこそ。

鎖国状態であった故に発展した、国内独自の文化を売り物にして、ようやく可能にしているのだ。

皮肉なことだが、今箱庭帝国が観光事業で栄えているのは、箱庭帝国が長い間鎖国状態にあったからなのだ。

ついでに言うなら、箱庭帝国が改革を始めたのは…。

もっと正しく言うなら、ルアリスが革命軍を組織することを決めたのは。

一部の特権階級を除く、全ての国民が、限界まで追い詰められていたからだ。

ルティス帝国の貧民街みたいな生活を、ほぼ全ての国民が送っていた。

国内の意見がまとまっていた。「もうこんな生活は嫌だ」と、国民全員が思っていた。

だから、ルアリスが『青薔薇十字軍』を立ち上げた途端、多くの国民がルアリスを英雄として称えたのだ。

国民の誰もが、ルアリスのような英雄の誕生を望んでいた。

だからこそ、革命は成功した。

…で、ルティス帝国の場合はどうだ?
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