The previous night of the world revolution~T.D.~
「どうしたんですか?ルルシー」

「申し出を受ける前提で、話を進めるのは良いが。まだスパイをやると決まった訳じゃないだろう」

そういえば、そうだった。

まだ、帝国騎士団の申し出を、受けるか受けないかも決めてないんだった。

さっきまでの話し合いは、受けることを前提で、どうするかについて話してただけで。

まだ結論を出した訳じゃない。

あ、やっぱりやめときます、という選択肢もある訳で。

でも、ここまで話が煮詰まっちゃうと。

「もう、すっかりやる気になってました」

「なるな。俺は反対だからな。お前が学校に潜り込むことになるなら、余計反対だ」

ルルシーは、断固反対派。

「シュノさんはどうです?まだ反対?」

「…そうね…。ルレイア達を信用してない訳じゃないのよ?でも…。自分から危険に飛び込む必要はないと思うの」

「成程」

相変わらず、シュノさんも反対意見寄り。

「アリューシャは?」

「アリよりのナシ!かつ…ナシよりのアリ!」

よく分からない派、と。

つまるところ、やっぱり決めるのは…。

「…あなたはどうしたい?アイズ」

改めて。

アシュトーリアさんが、アイズに尋ねた。

…やっぱり、アイズの一存次第、ってことになっちゃうか。

まぁ、この話を受けたとして、一番得をするのはアイズだからな。

「そうですね…。ルレイア達の身の安全を第一優先に…と考えると、断るところなんでしょうけど」

アイズは、苦笑いで言った。

「長期的に見れば、ここで多少のリスクを背負っておけば、将来の『青薔薇連合会』の安泰を守れる」

そうなりますね。

「ついでに、帝国騎士団を実質尻の下に敷くことが出来る。私としては…この『見返り』を逃すのは惜しいですね」

「じゃあ…」

「受けましょう。帝国騎士団と手を組み、精々ルティス帝国の平和と秩序を守るとしましょう」

…潔い判断だ。

嫌いじゃないよ、そういうところ。

「…それに、放置しておいて、本当にルティス帝国が共産主義になったら、私達も商売がしにくくなるし。手を打てるなら、お得な特典がついてくる今の方が良いかなって」

「…ふふ」

アシュトーリアさんは、アイズの決断に微笑んでみせた。

「やっぱり、アイズは私に似てるわね。贅沢なの」

「アシュトーリアさんも、私と同意見ですか」

「そうね…。あなたの立場だったら、申し出を受けたでしょうね。…でも」

でも?

「それなりの覚悟は必要よ。それは分かるわね?」

「勿論」

我らがアイズには、言うまでもない。
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