The previous night of the world revolution~T.D.~
…しばしの沈黙が続いた後。

先に口を開いたのは、エリミアの方だった。

『…あくまで君は、『ルティス帝国を考える会』を脱会するつもりはないんだね?』

『はい。そのつもりです』

当たり前だ。

そういう「お約束」だからな。

お前だけ抜けるとか、それは契約違反だ。

行き先が地獄であろうと、お前達帝国騎士団の方から持ちかけてきた話なんだから、逃げることは許されない。

ちゃんと付き合ってもらうぞ。最後までな。

『俺は『ルティス帝国を考える会』に入ってるんです。『帝国の光』じゃありません』

『…』

『あなたが忘れたとしても、俺はまだ、『ルティス帝国を考える会』の原則を忘れてはいませんから』

『…そう』

なかなかスパイスの効いた皮肉だが。

エリミアにはもう、言い返す気力も残っていないらしい。

完全論破されたんだからな。仕方ない。

『俺の居心地が悪くなるんじゃないかってことなら、特に心配して頂かなくて結構です。今に始まったことじゃありませんし』

追撃を入れていくスタイル。

嫌いじゃないよ。

『これ以上、強制的に脱会を迫るようなら、俺は本当に学生会に訴えます。良いですよね』

おぉ、それは良い脅しだ。

これで、少なくともエリミアの方から、これ以上ルーシッドに手出しは出来ない。

ルーシッドが自発的に「やめる」と言わない限り、『ルティス帝国を考える会』からは抜けられない。

そして、『青薔薇連合会』との約束のせいで、ルーシッドが自発的に「やめる」と言うことはない。

泥沼にご招待。

『…分かったよ』

エリミアも、そういう風に脅されたら、何も言い返せない。

ルーシッドが今日のことを学生会に訴えたら、『ルティス帝国を考える会』の存続が危ぶまれるからな。

『帝国の光』と組むどころじゃなくなる。

あくまで、『ルティス帝国を考える会』は、ルティス帝国総合大学の中に数あるサークルの一つでしかないのだ。

それを忘れるな。

『…それから、これだけは言わせてもらいます』

『…何?』

『会長も、他の会員の皆さんも、俺も…ルティス帝国の未来を想っているのは、同じです』

…。

『ただ、やり方や考え方が違うだけで。ルティス帝国の未来を守りたい、その気持ちは、皆一緒なんです。それだけは…忘れないでください』

『…そうだね、分かったよ』

…本当に分かったんだか、分かってないんだか。

顔が見られないから、エリミアの真意は分からないが。

とりあえず、これで「デート」は終わった。
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