The previous night of the world revolution~T.D.~
とはいえ。

今回は、よくやったと褒めてやっても良い。

ルーシッドにしては上出来だ。

「ちょっと、頭に血が上ってしまって…つい大人気のないことを言ってしまったとはんせ、」

「とんでもない!俺だったら、あと8割増くらいで言い返してましたよ」

「…」

何故黙る?

「しかしまぁ、勝手なもんですね。『どんな意見でも尊重される』とか言っときながら、反対意見を口にしたら『出ていけ』とは」

「はい…。『ルティス帝国を考える会』はもう、完全に共産主義組織になってしまったようです」

「まぁ、最初からそんなようなものでしたけどね」

ルーシッドへの風当たりが強かったのは、最初からだ。

とはいえ最初の頃は、ルーシッドの意見もちゃんと聞いてもらえていた。

皆に反対する意見を口にしても、「出ていけ」とまでは言われなかった。

それが今や、この体たらく。

ルーシッドが言った通り、詐欺みたいなものだ。

「…どうしましょう、ルレイア殿」

「あん?」

「あの場では保留にしておきましまが、今回の件は、学生会に報告すれば、サークルを解散…まではさせられなくても、何らかの制裁は与えられると思います」

「あー…」

そうだろうな。

ルーシッドが、学生会に「『ルティス帝国を考える会』のエリミア会長に、脱会を迫られた」と、大袈裟に訴えれば。

学生会は動くだろう。恐らく、何らかの制裁は与えられる。

サークル解散命令は出ないにしても…活動制限くらいは与えられるだろう。

一ヶ月活動停止とか、エリミア会長の解任とか。

ついでに、『ルティス帝国を考える会』が、勝手に外部の組織…『帝国の光』なんていう、怪しげな組織と繋がろうとしていることも、密告してやれば良い。

上手く行けば、学生会が『ルティス帝国を考える会』を危険なサークルだと判断し、監視対象にしてくれるかも。

そうすれば、エリミア率いる、ルティス帝国総合大学の共産主義分子は、さぞや動きづらくなるだろう。

幸いこちらには、エリミアに脱会を迫られたときの音声がある訳だし。

証拠はある。

「『ルティス帝国を考える会』を潰すには、良い機会かもしれません。ここを潰してしまえば、我々も『帝国の光』や、『赤き星』の監視に加われます」

「…悪くない案だとは思いますが」

ようやく、自称善良なサークルが、ボロを出してくれたんだからな。

思いっきりそのボロを突いて、一気にサークルそのものを瓦解させてしまうのも…。

…悪くはない。

…だが。

「…やめておいた方が良いでしょうね」

「…そうですか」

理由は二つ。

一つ目は、この一件だけで『ルティス帝国を考える会』を潰すには、少々弱いという点だ。
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