The previous night of the world revolution~T.D.~
エリミア自身も、そう言っていたように。

学内のサークルが、外部の組織と繋がること自体は、別に規則違反に触れたりはしない。

ルティス帝国総合大学にある、他のサークルだって…例えばボランティアサークルなんて、市のボランティアクラブと提携しているし。

他大学のサークルと共同で活動するなんてことは、サークル同士ではよくあること。

『帝国の光』との提携も、その一環と言われたら、学生会も言い返せないだろう。

で、今回、エリミアが個人的にルーシッドに向かって、退会を迫った件だが。

これは確かに完全にアウトだが、それでも、サークル全体を攻撃するには、弱い。

何らかの制裁は加えられるだろうが、精々一ヶ月ほど活動停止処分が良いところ。

最悪、エリミア自身が会長を解任されるだけで、ケリをつけられるだろう。

『ルティス帝国を考える会』というサークルそのものは、存続するだろう。

それじゃあ意味がない。

例えエリミアを解任したところで、第二、第三のエリミアは、サークル内にいくらでもいる。

むしろ、エリミアを告発したことで、ルーシッドは余計に、サークル内でヘイトを買うだけだろう。

それに、証拠となる音声データだが。

そこには、ルーシッドが「今回は目を瞑るが、次は学生会に報告する」と警告をしている音声が入っている。

一度、「今回は目を瞑る」と言ったのに、それを無視して学生会にチクったら。

学生会としても、印象が悪いだろう。

学生会に報告しても、得られるメリットは少ない。

と言うか、デメリットしかない。

どれも、『ルティス帝国を考える会』そのものを解散させるには、弱い。

エリミアがもっと過激な発言をしてくれていれば、それを証拠に出来たんだがな。

「さすがに証拠がこれだけじゃ、解散までは至らないでしょう」

「…そうですか」

それに学生会は、『ルティス帝国を考える会』が「個々人の意見を尊重する」とかいう、

今となっては失笑モノの大原則があったことを、知らないのだ。

いくらルーシッドが「俺、会長に騙されたんですよ!詐欺に遭ったんですよ!」と訴えたところで。

学生会としては、「はぁ、そうですか」としか言えないだろう。

よって、この証拠だけで、『ルティス帝国を考える会』を瓦解させるのは、非常に困難。

しかも、失敗した後のデメリットが大きいので、却下。

そして、二つ目の理由は。

「…そもそも、今となっては、サークルそのものを解散させたところで、何の意味もないですよ」

「…」

ルーシッドも、薄々分かっていたのだろう。

何も言わなかった。
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