The previous night of the world revolution~T.D.~
ヒイラの信用を得て、彼の真意を確かめることが出来れば。

奴の真の目的が何なのか、この集めた人と金を何に使うつもりなのか、教えてもらえるだろう。

しかし俺はまだ、ヒイラの信用を得るに至っていない。

…これでも、奴の要求には全て応え、忠実に『帝国の光』に尽くしているつもりなんだがな。

「バイト先」のホストクラブが怪しまれているのか…。

それとも、単に俺がまだ新参者とみなされているのか…。

いずれにしても、事が大きくなり始めている今、その渦中にいられないのは、スパイとして問題だ。

さて、どうやってヒイラの信用を得たものか…。

紙幣を数えながら、俺は内心溜め息を漏らした。

そのとき。

「…おっ、いたいた、同志ルニキス」

「…!同志ヒイラ…」

件のヒイラ・ディートハットが、姿を現した。

俺の心の中でも覗いていたのか?

「凄いな。集まってるみたいだな」

テーブルの上の札束を見て、ヒイラが言った。

用事があるのは俺か、この札束か。

恐らく後者なのだろう。

「あぁ、もう人の手で数えられる枚数じゃない。口座の開設を強く所望する」

「はは、ごめんごめん。大変な仕事させてごめんな」

言いながら、ヒイラは俺の前に座った。

「でも、大事な仕事なんだよ。こうして皆が集めてくれた金があるから、俺達は活動が出来る」

…と、真剣な顔つきになるヒイラ。

「だから、誰にでも任せられる仕事じゃない。頼りにしてるよ、同志ルニキス」

「それは光栄だな」

物は言いようって奴だな。

どうせお前達の資金源は、この募金箱だけじゃない癖に。

札束数えておいて、こんなことを言うのもなんだが。

今やこれだけ大きくなった組織が、系列組織からの献金だけで、維持出来るはずがない。

「…それで、何か用があって来たのか?」

まさか、金集めをしている俺が、ネコババするんじゃないかと抜き打ちチェックしに来た、なんて訳じゃないだろう?

「あぁ、それなんだけどな。ちょっと来て、見て欲しいものがあるんだ」

と、朗らかに言うヒイラ。

「見て欲しいもの?」

「見てからのお楽しみだ。ちょっと来てくれないか」

「…分かった」

俺は、札束の管理を他の同志達に預け。

ヒイラと共に、例の「故障中」エレベーターに乗せられた。
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