The previous night of the world revolution~T.D.~
『天の光教』のときも、そうだったが。

人々の信仰心、思想、理念…これらは恐ろしいものだ。

人間を突き動かす、原動力になる。

『天の光教』が、その信仰心故に、狂気的な行動を取ったことは、記憶に新しい。

問題は、ヒイラ・ディートハット一人だけではないのだ。

彼を殺せば事が終わるなら、もっと話は単純だった。

彼が死んでも、彼の描いた理想、思想は、彼の部下達に伝播している。

ルチカ・ブランシェットが投獄され、『天の光教』が解散されても。

ヒイラ・ディートハットがその意志を継ぎ、『帝国の光』を結成したように。

例えヒイラがいなくなっても、また別の人間が、別の組織を作るだろう。

まぁ、誰でもがリーダーになれる器を持っているかと言われたら、それは否だが。

ルリシヤからの報告を聞くに、『帝国の光』の、ヒイラの側近達…あの親衛隊は、かなり狂気的な集団だ。

かつてルチカ・ブランシェットがそうだったように。

目的の為なら、自爆テロだろうが、大量殺戮だろうが、当然のように正当化する気概を感じる。

そして、博愛の精神を持っていた『天の光教』と違い、

『帝国の光』は、王族打破、帝国騎士団打破を掲げ、その為の流血は厭わない…どころか。

今まで利権を貪ってきた、これらの特権階級の人々は、報復と見せしめの為に処刑するべき、という過激な考えを持っている。

武力を行使することに、『天の光教』以上に躊躇いがない。

そんな連中を裏切り、果たして私達は、無事でいられるだろうか?

幹部組は、何人何十人、何百人規模で攻めてきても、返り討ちにしてやれるけど。

ルレイアに鎌を持たせて、ルルシーをくっつけて投入しておけば、それだけで『帝国の光』は壊滅する。

だが、それは『帝国の光』が、真っ当に私達に挑んできてくれれば、の話だ。

ヒイラ・ディートハットは、あの楽観的で、博愛の精神を持っていたルチカ・ブランシェットとは違う。

彼は、もっと懐疑的で、そして狡猾だ。

裏切り者は当然許さないが、私達に真っ向から敵対して、勝てないことを知っている。

だったら、どうする?

きっと、今私達がしていることと、似たようなことを仕掛けてくるだろう。

ルーチェスを疑った『赤き星』が、当のルーチェスではなく、彼の奥さんに狙いを定めたのが良い例だ。

私達に直接挑むのではなく、スパイや刺客を送り込み、うちの末端構成員を取り込み。

内部から、『青薔薇連合会』を崩そうとするだろう。

構成員達は、お互いがお互いをスパイかもしれないと疑い合い、疑心暗鬼に駆られ。

それによって、組織の統率力を低下させる。

真っ向から挑まれるより、遥かに厄介だ。
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