The previous night of the world revolution~T.D.~
「成程、完全に理解しました」

「でしょ?私だって、やれば出来るんだよ!」

「そうですよね。ごめんなさい、僕、セカイさんのこと見くびってました」

「も〜、ルーチェス君ったら。お姉ちゃんを何だと思ってるの〜」

「キッチンブレイカーの類だと思ってました」

「素直だね君は!?けしからん弟だ!」

ごめんなさい。

「さすがのセカイさんも、カップ麺くらいは作れますよね。前にカップ麺紹介してくれたのもセカイさんですし。あれ結構美味しいから、たまにはカップ麺を夕食に、っていうのも悪くないですよね」

「ふぇ!?」

ふぇ?

「何?ルーチェス君、私がカップ麺でドヤ顔してると思ってたの!?」

「え?はい」

「素直!でも違うよ!カップ麺じゃない!」

え、カップ麺じゃないの?

…マジで?

「そんな…。セカイさんが…カップ麺以外、何の調理が出来るって言うんですか…?」

「…そんな、世界の終わりみたいな顔して言わないでよ…」

いや、マジで。

昨日の今日で、セカイさんがまともに料理出来るようになったなら。

それは本当に天変地異か、やっぱり影武者説を疑うレベルだから。

僕明日から、大学生なんだけど。

もしかして、入学式を迎える前に、世界終わる?

グッバイ今世。来世でも宜しくな。

僕の来世って、なんかろくでもないこと起きそうだから、まだ今世を生きていたい。

「私が何作ったか、匂いで分からない?」

「…そうですね、さっきから…何やらスパイシーな香りがしてますね」

帰ってきたときから、玄関に漂うスパイシーな香り。

「そうそう!家庭で作る、スパイシーな料理の定番と言えば…?」

「…チリコンカン?」

「何でそうなるの!?」

え、違うの?

「そうだった。ルーチェス君、まともな家庭で育ってないんだった」

「済みません。僕、まともじゃない家庭で育ったもので」

ちょっとその、あれ。

王宮で育ったもんで、いまいち世間の常識というものが分からず。

「もー…困った弟君だな〜」
 
「元王子で済みません…」

「本当だよ!」

…それで。

結局、このスパイシーな香りの正体は、何なんだろう?

「よし、じゃあ答えを教えてあげよう!キッチンにどうぞ〜」

え、キッチンに?

「…心の準備とかしなくて良い奴ですかね?」

「大丈夫だよ!安心しておいで!」

「分かりました。じゃあひとまず深呼吸だけ…」

「しなくて良いから!ほらほらこっち!」

「あ、はい」

背中を押されて、キッチンに向かうと。

恐れていた、キッチンの損傷は見られず。

朝出てきたときのままの、綺麗なキッチン。

朝と異なる点は、ガス台の上に、鍋が置かれていること。

…この鍋…。

「じゃーんっ!カレーです!」

セカイさんが、得意そうに鍋の蓋を開けてそう言った。

カレー…。

…。

僕は、ドヤ顔のセカイさんを横目に、おもむろにカレーの入った鍋を覗き。

次に、傍らの冷蔵庫を開けた。

そして、ダイニングテーブルの上の、レンジでチンするだけのご飯のパックを見つめた。

…ふむ。

「…?何してるの?ルーチェス君」

「…セカイお姉ちゃん」

「?何?」

「白状するなら、今のうちですよ」

「ぎくっ!な…な、何のことかな〜?」

…目、泳いでますけど。

ようやく、このカラクリが分かった。

僕はむしろ、安心したが。

セカイさん的には、頭の中大パニックだろうな。
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