The previous night of the world revolution~T.D.~
…退くべきか。

残るべきか。

仮に退いたとして、帝国騎士団が始末をつけてくれるだろうか。

ヒイラ・ディートハットはどう動くだろうか。

『帝国の光』と提携している別組織は?

ルティス帝国の若者達が浮かされている熱は、いずれ冷めるだろう。

時間が来れば、若者達は目を覚ます。

それは歴史が証明している。

ルティス帝国は今まで、何度も似たような現象を経験してきたのだ。

若者達が、一部の熱狂的な指導者のもとで、一時的に政変を望み。

時間の経過と共に、その熱は冷め、結局元の鞘に収まっている。

今を凌げば良い。

今、ヒイラ・ディートハットを止めれば良い。

そして今、それが出来るのは誰だ?

『帝国の光』から手を引いてしまえば、私達はこれ以降、彼らの動向を知る術をなくす。

更に、裏切り者とされたルリシヤ達は、彼らの報復と追跡から逃げ続けなければならない。

箱庭帝国に逃げたルーチェスは、永遠に帰ってこられない。

『青薔薇連合会』は疑心暗鬼に囚われ、組織力の低下に見舞われる。

…それでも。

…それでも私は、彼らに「帰ってこい」と言うべきか?

あとの始末を、帝国騎士団のみに委ねて良いのか?

この時点で帝国騎士団に責任を丸投げして、これから先、『青薔薇連合会』と帝国騎士団の関係はどう変わるだろう?

勿論、「契約」は守ってもらうつもりだが。

帝国騎士団はどう動くのか。彼らは私達に何を望むのか。

…いや、帝国騎士団が私達に何を望もうが、それは知ったことではない。

それよりも、もっと大事なことがある。

ルレイアは。ルリシヤは。シュノは。

途中で箱庭帝国に亡命を余儀なくされた、ルーチェスは。

今も危険と隣り合わせで任務を果たしている、彼らは、何を望む?

私に、どうして欲しいと思うだろうか。

どんな指示を求めているのだろうか。

強い意志と決意を持って、任務に臨んだ彼らは。

私の、勇敢な仲間達は。

彼らは、何を望んでいるのだろうか。

「…」

「アイ公〜…」

思案する私を、アリューシャが心配そうに呼んだ。

「アリューシャ、難しいことわっかんねぇけど…。でも、アイ公が、すげー悩んでるのは分かったから」

「…」

「だから…アイ公が正しいと思ったことが、正しいんだと思う。アリューシャはそう信じる」

…アリューシャ…。

…そして、ルルシーも。

「…お前なりの、考えがあるんだろう?」

「ルルシー…」

「俺は正直、どんな理由があれど、早くルレイアに戻ってきて欲しい…」

…そうだね。

君はそうだろう。

「…でも、ルレイアはきっと…ルレイアがここにいたら、きっと、今ここで退くことは望まないはずだ」

…うん。

私も、そう思ってる。

「止めて聞くあいつじゃないからな…。だったら俺がするべきことは、ルレイアと一緒に、危険を背負うことだ。あいつを、一人にしないことだ」

「…」

…ルルシー。

君の決意は、しかと受け取った。

その上で、私は決断する。

「…続行だ。今は退かない。私達は、『帝国の光』を、その系列組織を、完膚なきまでに叩きのめす」

『青薔薇連合会』の為。

そして、私の大事な家族の為に。
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