The previous night of the world revolution~T.D.~
「今すぐ、この部室から退去してもらいます。室内にあるものは、全て学生会が押収します」

私は、相変わらず毅然として言った。

しかし。

「ちょ、ちょっと…!どういうことですか!?何でいきなり…」

「私達が何をしたって言うんです!?」

『赤き星』のメンバー達が、慌てて立ち上がった。

抗議しても無駄だ。

「何をしたですって?白々しい。自分達が何をしたかなんて、言われなくても分かってるでしょう!」

私は、サナミア達がルーチェスにしたことを思い出して、怒りをあらわにした。

努めて、怒っている振りをしなければならないと思っていたが。

『赤き星』がルーチェスにしたことを思えば、演技しなくても、自然と怒りも湧いてくるというものだ。

「だから、一体何を…」

「何を?教えてもらわなければ分かりませんか?自分達の犯したことを」

「私達は、何も咎められるようなことはしていないわ」

サナミアが、焦ったような、怒ったような、そんな顔で言った。

そう。

一応、悪いことをしてる自覚はあったのね。

「何処までも、惚けるつもりのようですが…。そんなことをしても無駄です。こちらは、もう証拠を掴んでますから」

「証拠って…何の…」

「まず、『赤き星』の、毎月の度を越えた同好会費の使い込み。この費用の用途を、詳しく調べさせてもらいました」

「…!!」

そこまでされる、とは思ってなかったようだ。

実際、普通はそこまで詮索したりはしない。

使った費用は、そのサークルが申告した用途で使ったものと判断し、それ以上の追及はしない。

とはいえ、『赤き星』がサークルの規模を遥かに越えて、同好会費を使い込んでいることは、同好会委員なら、誰でも知っていた。

それでも、「あのサークル、なんか詮索するの怖いから、やめとこう」という暗黙の了解があり。

これまで、誰も『赤き星』の使い込みについて、追及する者はいなかった。

しかし、私は違う。

私は学生会に入ったときから、『赤き星』が明らかに、同好会費を不当な目的に使用していると判断し。

使われた費用の行く先を、調べていた。

その先が、『帝国の光』であることは分かっていた。

ただ、その証拠が掴めなかった。

しかしようやく、私はその証拠を入手した。

そして私は、その証拠を持って、学生会に突きつけた。

「『赤き星』は、学内の同好会費を、『帝国の光』という学外の共産主義組織に献金している」と。

要するに、『赤き星』が『帝国の光』に貢いでいると告発したのだ。

これには、腰の重い学生会も、動かずにはいられなかった。

この時点で、『赤き星』というサークルは解散させよう、と学生会で正式に決定が下った。

…そして。

それだけではない。

「あなた方への正式な告知はまだのようですが、近くあなた方全員に、退学処分が課されることになっています」

「…!?」

ただでさえ、動揺していた『赤き星』の党員達は。

驚きのあまり、絶句していた。
< 474 / 820 >

この作品をシェア

pagetop