The previous night of the world revolution~T.D.~
疑心暗鬼に駆られ、お互いがお互いを睨み合い。

同時に、全員が顔面蒼白で立ち尽くしている。

この光景を、ルーチェスに見せてあげたかった。

彼には、その権利がある。

でも今ルーチェスは、この場にはいないから。

代わりに私が、瞼の裏に焼き付けておこう。

ルーチェスの分まで。

「更には、これまで警告があったにも関わらず、同好会費の過剰な使い込みをしていた事実があります」

ちゃんと、ファイルに残してあるから。

言い訳は出来ない。

「そして、その使い込みの用途が、学外の組織への献金…。申告していた用途と違いますよね。これまでずっと、虚偽の申告をしていたことになります」

「そ、それは…」

「で、でも、何で俺達が、俺達まで…!」

「これまで学生会は、あなた方の横暴に、随分と目を瞑ってきました」

私は、彼らに抗弁する隙を与えなかった。

「ですが、もう限界です。こんな事態になるまで、止めることが出来なかった学生会の怠慢を恥じると共に、あなた方を粛清することになりました」

「そ、そんな…!」

「同好会費の過剰な使い込み、学外組織への勝手な献金、そして何より悪質なのは、そのお金を工面する為に、下級生を恫喝した…」

「待って。私は、私達はやってないわ!恫喝なんて…」

必死に抗弁しようとするサナミア。

そうでしょう。あなたはそう言いたいでしょう。

でも駄目だ。許してあげない。

「言い訳をしても無駄です。全て、証拠は揃っていますから。学生会にも、大学の学生課にも、証拠と共に報告してあります。退学処分についても、追って、連絡があるでしょう」

「…!」

「やり過ぎたんです、あなた方は」

危険な思想を抱き、サークルを結成し。

そこまでは、まだ良かった。

あなた達は、罪を犯した。

私の家族を、傷つけるという罪を。

私は、私の家族を傷つける者を許さない。

何人たりとも。

「…お話は以上です。すぐに部室から退去してください。ここにある者は、全て学生会が押収します」

「…」

サナミアは、最後まで呆然自失としていた。

…これが。

命以外、何もかもを失った人の顔か、と思った。

仕事柄、何度も見たことがあるものだが。

あまり、見慣れたいものではないな、と思った。
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