The previous night of the world revolution~T.D.~
「結局、ルーシッドは嫁を箱庭帝国に残してきたんですか?」

「あぁ。そう言ってた」

「ふむ…。それは気の毒ですね。愛する嫁と引き離される悲しみは、俺もよく知ってます」

「…誰のことだ?」

「いやんルルシー、えっち!」

「何処がだ!」

…。

…仲良さそうで何より。

話に入っていけない…。いや、いっそ話に入らない方が良いのかもしれないが…。

「それと!アイズとシュノの計画が成功して、『赤き星』が崩壊したぞ」

えっ。

「ほう、それはそれは、朗報ですね」

「本当ですか…!心配してましたけど、上手く行ったんですね」

と、思わず口に出してしまったのが間違い。

「は?失敗するとでも思ってたんですか?うちの幹部が?」

ギロリ、と死神の目に睨まれた。

背筋が凍る。

ルーシッドよ、発言には気をつけろ。

「い、いえ…。ま、万が一ということもありますので…」

「万に一つ?こちとら、億に一つの仕事してんですよ。舐めないでもらえます?」

「す、済みません…」

今ここに、鎌があったら。

俺は、その鎌の錆にされていたに違いない。

しかし。

今ここにいるのは、死神の鎌ではなく。

その死神を止めることが出来る、唯一の救世主だ。

「こら、ルレイア。年下相手に凄むんじゃない」

ペシ、とルレイア殿の後頭部をはたくルルシー殿。

この世でそんなことが出来るのは、あなただけですよ。

「だってルルシー。アイズが計画して、シュノさんが実行したんですよ?失敗する訳ないじゃないですか」

「それはそうだが、だからってルーシッドを脅すんじゃない」

…敵組織ながら、凄いな。マフィアの結束力。

仲間が失敗することを、微塵も疑ってない。

常に「失敗したときのプラン」を用意する帝国騎士団とは、大違いだ。

別にどちらが良い悪いという訳ではないが、その信頼感は、素直に羨ましい。
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