The previous night of the world revolution~T.D.~
…と、その前に。

お隣のフューニャさん力作の、カレーライスを頂かなくては。

「ルーチェスく〜ん。まだ?」

「もうちょっと待っててください」

先程、自分が有罪判決を受けたことを、すっかり忘れたのか。

カレーの付け合わせにと、サラダを作っている僕を急かすセカイお姉ちゃん。

面の皮が厚過ぎてめっちゃ好き。

「はい、出来ましたよ」

「わ〜い!いただきまーす」

お隣さん家の夕飯。

いただきます。もぐ。

…うん。

「わ〜!美味し〜!」

その気持ちはよく分かる。

セカイお姉ちゃん大歓喜。

これまで、一応王族の端くれとして、名のあるシェフの逸品だの、世界の珍味だの、色々食べてきたが。

それに勝るとも劣らない味。

ルヴィアさんって、毎日こんなもの食べてるんだな。あの人、食生活についてはかなりのブルジョア階級だ。

「ねっ、ルーチェス君。美味しいでしょ?」

「そうですね…。この見事なスパイスの調合。鼻に抜けるような芳ばしい香り…。さすが秘境の里の一族。侮れません」

「良いなぁ〜フューニャちゃんは料理上手で。フューニャちゃんの旦那さん、毎日こんな美味しい料理食べられて幸せだろうな」

…。

…何だろう。

美味しいのは認めるが、それだけに…主夫としてのプライドを刺激される。

そんな秘境の里出身の、熟練カリスマ主婦と。

元王族で、「猿でも出来る!」シリーズの料理本から料理を始めた僕を、比較するのはおかしいのだろうが。

それでも、何と言うか…。

…はっきり言って、ちょっと悔しい。

…さすがに、秘境の里出身の鼻は持ってないから、ことスパイスを使う料理に関しては、負けを認めざるを得ないが。

「…他の料理なら、僕も上手に作れますよ?」

「ふぇ?」

「隣の芝生は青いと言いますが、あなたの目の前にある芝もなかなか優秀な芝なので、それは忘れないでもらいたいですね」

「…」

僕の芝だって、ちゃんと青いですよ。

青過ぎて真っ青のレベル。

そんなきょとんとしないでくださいよ。

「…え、ルーチェス君、もしかして妬いてる?」

「…別に妬いてないですよ」

「ルーチェス君が妬いてる〜!可愛い〜!」

何処がだよ。

ってか、妬いてないって言ったじゃないですか。

…まぁ、ちょっとは妬いてるけど。

「大丈夫大丈夫。ルーチェス君の作ったご飯が、私は一番美味しいよ!」

「…本当にそう思ってます?」

「思ってる思ってる!当たり前じゃない!も〜ルーチェス君ったら、ういのう、ういのう〜!」

スプーン片手に、頭を撫でられた。

…。

若干、複雑な気持ちだが。

それでも、僕の芝もちゃんと青いと分かってくれてるなら、良かった。

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