The previous night of the world revolution~T.D.~
これが、原理的共産主義の厄介なところだ。

どれだけ組織の為に尽くしても、評価されない。

骨身を惜しまず尽くそうが、言われたことだけ適当に済ませようが、報酬は同じ。

頑張っても報われない。頑張ってない奴と同等の扱いを受ける。

だったら、粉骨砕身して努力するなんて馬鹿馬鹿しい。

初めから努力などせず、適当にやってれば良い。

報酬は一緒なのだから、人間誰しも、それなら楽な方に逃げようとする。

当たり前の心理だ。

で、そんなことを繰り返していくうちに、粉骨砕身していた真面目組が、どんどん適当組に鞍替えしていって。

適当組が増えて、今まで組織の為に創意工夫を繰り返していた、組織にとってなくてはならない真面目組が消滅する。

皆、言われたことだけ適当にやる、適当組になってしまう。

そうしたら、もうおしまいだ。

経営者がいかに創意工夫を促そうと、適当組はそれが評価されないことを知っている。

だから、何を言われても適当にやる。

適当どころか手を抜き始める。

報酬は一緒なのだから、そりゃ楽な方に楽な方に流されるのは当たり前。

最終的には、そのせいで何もかも立ち行かなくなって崩壊。

上の人は上の人で、下の者には平等を言いつけながらも、自分達はやっぱり上の人だからと、下の者から搾取して私腹を肥やす。

こうして上の人と下の人との格差が開き、結局これって不平等じゃない?ってなって…。

やっぱり、最終的には崩壊。

共産主義ってなぁ、思想自体は素晴らしいシステムだし、実現出来たら画期的だとは思う。

実際、村単位の小さなコミュニティでは、それが成功を収めている例もある。

しかし、これが国単位となると、話は変わってくる。

「あいつより、俺の方が優秀なのに」とか。

「周りより良い思いをしたい。ちょっとくらいなら良いだろう」とか。

そういう、人間として当たり前の、利己的な欲望がある限り。

現状、人間に完全な共産主義国家の運営は無理難題だ。

誰だって、他人より良い思いをしたいのは、当たり前なのだから。

今、ヒイラの親衛隊達が、や…っすい月給で馬鹿みたいに働いているのは。

親衛隊達そのものが少数であり。そして確固とした目的があるからだ。

ルティス帝国の未来の為に…とかいう、例のスローガン。

あれを目標に掲げている限り、親衛隊達は、例え無償でも、ヒイラに尽くすだろう。

国家そのものが共産主義化すれば、誰もが親衛隊達のように、真面目に馬車馬のように働くと思ったら。

それは大きな間違いだ。

今一生懸命な親衛隊達だって、いざルティス帝国が本当に共産主義国家になったら(そんなことは有り得ないし、俺達がさせないが)。

目的意識を失った彼らは、段々とやる気をなくし、働いても評価されない現状に嫌気が差してくるはずだ。

俺でさえ、既にやる気をなくしつつあるのに。

ヒイラはそこのところ、どう考えているのだろう?

俺は常々、そんなことを考える。

人間に欲望がある限り、越えられない高い壁を。

ヒイラは、どうやって越えるつもりなのだろうか?
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