The previous night of the world revolution~T.D.~
つまり、本来『帝国の光』が設置していたカメラと盗聴器は、全て撤去されている。

そして、このルリシヤお手製のカメラと盗聴器で録画、録音された音声動画は、真っ直ぐルリシヤのPCに送られる。

ルリシヤは、送られてきた音声動画を、編集、加工する。

ここで、俺からルリシヤへの情報伝達が行われる。

俺がこうして、独り言のように喋っている音声は、今頃ルリシヤに届いていることだろう。

そしてルリシヤは、何食わぬ顔でその音声を聞き、聞いた上で音声の部分を消去。

何事もなかったかのように、他の監視人達に動画を送る。

本来なら、この部屋で起きていることは全て、リアルタイムで、監視人達に届いているはずだった。

しかし、その直通の通路の間に、ルリシヤが挟まって、他の監視人に見られても良いように加工しているのだ。

勿論、ルリシヤが音声を消去する編集作業には、僅かとはいえ時間がかかる。

リアルタイムで実況中継されてなければならないはずの動画が、遅れて配信されたら、監視人達も疑問に思うはず。

だが、そこはちゃんと織り込み済み。

ちゃんとルリシヤが、ラグを消去して伝えてくれている。

時間としては、俺が今ここでしていることを、監視人達がカメラを通して「見る」ことになるのは、精々5分後ってところか?
 
その5分の間に、ルリシヤは俺からの情報伝達を聞き、かつ音声データを消去し、ラグを修正している訳だ。

ルリシヤ、マジ天才。

こういった「小細工」に関しては、彼の右に出る者はいないな。

とはいえ、毎回5分で確実に修正するのは、さすがにキツいので。

俺も、情報伝達は極力簡潔、かつ控えめに行う。

それに、今のところ、弄れるのは音声データの部分のみ。

カメラを通して筒抜けになっている、俺の一挙一動は、監視人達の目に晒されている。

時間をかければ、この一挙一動を編集することも可能なのだろうが。

ルリシヤの負担を考えて、そこまではする予定はない。

少なくとも、この「監視部屋」に囚われている以上、

言葉を伝えられるだけでも、充分楽な方だ。

ルリシヤがここに入ったときは、こんな小細工も出来なかったんだからな。

それを思えば、俺の置かれている状況は、随分優しい。

…で。

逆に、ルリシヤから俺への情報伝達は、どうするのか。

それは簡単だ。

ルリシヤは既にノーマークなのだから、何をしても怪しまれることはない。

メモに書いて、俺の郵便受けに放り込むだけで済む。検閲も何もない。

まぁそこは念を押して、俺へのメモは、暗号を使って書かれたものだが。

その暗号は、『青薔薇連合会』でのみ使われているものなので、外部に露見することは有り得ない。

こうして、俺とルリシヤは、互いに意思疎通を計るという訳だ。

お分かり頂けただろうか?

明日にでも、俺の郵便受けには、ルリシヤからの「お返事」が届いていることだろう。
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