The previous night of the world revolution~T.D.~
とはいえ。

突っかかるのは、ここまでだ。

本当に目をつけられたら、厄介だし。

「ありがとうございます。…その、出過ぎたことを言って申し訳ありません」

「いや、良いんだよ。むしろ、忌憚のない意見を聞かせてくれてありがとう。『帝国の光』は、君のような理知的な人材を求めているんだ」

「…感謝します」

そうだろうよ。

俺が理知的かどうかは別にして。

少なくとも、頭の良い人間を集めなければならないのは事実。

そうでなきゃ、あんな「モノ」は扱えない。

…まぁ。

実際にスイッチを握ってるのは、この馬鹿なんだから、いくら賢い人間が集まっても無駄だが。

馬鹿な指導者の周りに、賢い人間を集めるものではない。

そういう組織は、長く続かない。

指導者が側近の賢さに嫉妬し始め、どんどんその存在が疎ましくなっていくからだ。

…かつて『セント・ニュクス』で、グリーシュがルリシヤを追い出したようにな。

「よし、それじゃあ、本題に入って良いかな」

「あ、はい。お願いします」

来たな。

「同志エリアス、君には『帝国の光』の経理の手伝いをしてもらいたいんだ」

「えっ、俺がですか?」

入党していきなり、組織の経営に携わされるとは。

普通の企業でも、大抜擢だろうな。

「君、ルティス帝国総合大学の学生なんだろう?」

「は、はい」

「正直、うちにはそんな賢い人員は不足してるんだ。優秀な人材は、早いうちから育てておくに限る」

「で、ですが、俺…」

「大丈夫、大丈夫。一人でやる訳じゃないから。まずは手伝いから始めて、追々覚えてくれたら良いから」

そうそう。

ルリシヤから聞いたよ、その仕事。

ひたすら、万札を数える仕事なんだって?

小学生でも出来るわ。

組織から信用されてない者の仕事。

「監視部屋」にいるお前が、重要なポジションにつけるはずがない。

お前が言うか、って感じだけど。

ここで俺が何をするかは、既に決まっているのだ。

「わ、分かりました。頑張ってみます」

「うん、期待してるよ」

意気込むエリアスに笑顔を向け。

そして。

ヒイラは、今度は俺の方を向いた。

顔は笑っているのに、目が笑っていなかった。

…だから嫌いだよ、お前は。

「それから、同志ルナニア。君には、別の仕事を頼みたいんだ」

…来た。
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