The previous night of the world revolution~T.D.~
「別の…?何でしょう」

「これから、時間あるかな。ちょっと、一緒に来て欲しいんだけど」

「構いませんよ」

こうして。

俺はそこでエリアスと分かれ、ヒイラと共に、また「故障中」エレベーターに乗せられた。

行く先が何処なのかは、分かっている。

エレベーターに乗りながら、ヒイラが言った。

「これから、ちょっと驚くものを見ることになるかもしれない」

知ってるよ。

ちょっとどころじゃねぇだろ、馬鹿。

「驚くもの…?何ですか?」

「君は、また不快に思うかもしれないな。暴力に使うものだから」

「…暴力…ですか」
 
「やっぱり、暴力は出来るだけ見たくないか?」

当たり前だろ、人間として。

とはいえ、俺は人間と言うより死神寄りだからな。

別に嫌いじゃないよ。手段としての暴力はな。

だが、お前のやり口は気に入らない。大嫌いだね。

「…そうですね。出来れば、あまり見たくないのが本音ですが」
 
「まぁ、普通誰でもそう思うよな」

当たり前だろ馬鹿。

暴力が大好きって、それは人格が破綻してる奴だ。

「…だけど、同志ルナニア。賢い君なら分かってくれるだろう?この世には、必要悪ってものがあるんだ」

…必要悪。

その重要性はよく知ってるよ。

何せ俺の正体は、ルティス帝国の必要悪そのものだからな。

「ましてや俺達は、ルティス帝国の現体制と戦おうとしている。どうしても、衝突するときは来るだろう」

「…『帝国の光』は、対話と相互理解によって体制と戦うと聞きましたが」

「勿論そのつもりだよ」

嘘つけ。

「でも、その過程の中で、どうしてもぶつかり合うことがあるかもしれない。これから見せるのは、その為の備えなんだ。自衛以外の目的では、決して使わないことを約束するよ」

「…分かりました」

「ありがとう」

絶対嘘だからな。

もう、顔に「俺、今嘘ついてます!」って書いてある。

俺の、素直で謙虚な心を、少しは見習ってくれないだろうか?

限りなく透き通ってるからな、俺の心。

「さぁ、着いた。これだよ」

「…!」

『帝国の光』本部ビルの地下。

そこは、大量の粗悪な武器が置いてある、武器庫である。

ルリシヤから聞かされていたので、別段驚きはしなかったものの。

ルナニアとして見るのは初めてなので、驚いた振りはしなければならない。

「…これは…」

「弁解はしない。見ての通りだよ」

大量の武器を前に、俺は呆然と立ち尽くしている…、

ように見せかけて、一つ一つの武器の型番を観察していた。

成程、骨董品だな。

こんな骨董品、よくもまぁコツコツ集めてきたものだ。

路地裏のチンピラ未満だな。

こんなガラクタを、一体いくらで買わされたのか知らないが。

いつも『オプスキュリテ』で、最新の武器を仕入れている俺達からしたら、鼻で笑うような代物だ。

火縄銃と機関銃の戦いだな。

それでも、武器というものを全く知らない者からしたら、脅威であることに変わりない。

「不快だと思うか?」

「…いえ」

俺は、静かに答えた。

「これが必要悪と言うなら…そうなんでしょう。…でも」

「でも?」

「使われないことを、切に願ってます」

こんな火縄銃向けられたら、俺も困るからな。

あまりの装備の差に、本気出したら可哀想になってくるという意味で。

それでも容赦しないのが、俺の流儀だが。

「俺もだよ、同志ルナニア」

嘘つけ。

お前さっきから、何回嘘ついたら気が済むんだ。
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