The previous night of the world revolution~T.D.~
まさか、また相見えることになるとはな。

しかも、ここルティス帝国で。

「これはな、シェルドニア王国で発明された、物凄く画期的な技術なんだ」

ヒイラは、目を爛々と輝かせて。

地下室の天井まで届く、小さな塔を見上げた。

「このスピーカーから特殊な無音の電波が出て、その電波を聞くと人間は、一時的にせん妄状態に陥る。そして、その状態だと、人の言うことを聞き入れやすくなるんだ」

うるさいな、知ってるよ。

身を以てな。

しかも俺は、こんなチャチなスピーカーもどきじゃない。

本国で、本物の味を堪能したのだ。

お前のご高説など必要ない。

説明されるまでもなく、これが何なのか知っている。

「これを使えば、敵対する帝国騎士団の
連中や、王侯貴族達も、無血で説得することが出来る」

そうだろうよ。

これは、相手を洗脳する為の機械。

誰が異論を唱えようとも、お前がこれを持ち出せば、相手は洗脳され、お前の言うことを何でも聞くようになる。

ずっと守られてきた、シェルドニア王国の秘密が。

何故、遥か大海原を越えて、今ここにあるのか。

誰がこれを設計し、ここに持ってきて、ヒイラのような小僧に渡したのか。

それは分からないが。

俺達の当初の計画が大きく変わり。

『青薔薇連合会』の幹部達が、『帝国の光』に強引に集結した理由は、これだ。

シェルドニアの遺産。忌々しい、俺達にとっての憎い仇。

そして、これだけは。

これだけは決して、ルティス帝国に持ち込んではならないのだ。

ルティス帝国を、シェルドニア王国の二の舞いにさせるなど。

俺の目が黒いうちは、決して許しはしない。

ヒイラが、妙に自分の理想に楽観的だったのか、これで説明がつく。

これがあれば、国民を説得する必要も、粗悪な武器を掻き集める必要もない。

時間をかけて国民を洗脳し、帝国騎士団や王侯貴族達をも洗脳してしまえば。

ヒイラの言う通り、無血で政権を乗っ取ることが出来る。

それだけの力を持っている。

実際、シェルドニア王国が何事もなく機能しているのは、これのお陰なのだから。

まぁ、一部洗脳されていない、王族間のゴタゴタに巻き込まれはしたが。

あいつらは死ね。

ともかく。

「そんな技術が…」

「実在するんだ。本当なんだよ」

俺は、まるで初めて見たかのような反応を示した。

本音を言えば、今すぐこの機械を、愛用の鎌で刈り壊したいところだが。

そうも行かないので、演技を続けることにする。
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