The previous night of the world revolution~T.D.~
「あぁ、この部屋には、カメラや盗聴器の類はない。…と、俺の仮面の勘が言ってる」

「成程、それなら安心ですね」

ルリシヤの仮面がそう言ってるなら、動かぬ証拠って奴だ。

「地上は、あんなに監視カメラだらけなのに。ここだけノーマークとは」

「それだけ秘密の場所なんだってことだろう。録画したら、それを隠さなきゃならないからな」

「秘密にし過ぎて監視すらしないとは、一周回って天晴れですね」

「全くだ」

あぁ、話が合う。

やっぱり、久々に仲間に会うと、気分が違うね。

特にルリシヤは、情報伝達もずーっと間接的な手段ばかりで。

潜入任務を始めてから、面と向かって会う機会なんて、ちっともなかったから。

講演会でチラリと見かけはしたけど、声をかけることは出来なかったし。

こうして普通に、一対一で話すのは、本当に久し振りだ。

俺の方は、ルルシーと会ったりもしてたから、それほどでもなかっただろうが。

ほぼずっと、仲間達から隔離状態だったルリシヤにとっては、格別なものがあるだろうな。

「…と、久々の再会を祝って、しばらく世間話をしていたいところですが…」

俺は、ちっこい『光の灯台』…ならぬ。

『白亜の塔』を見上げた。

「状況が、それを許してはくれなさそうですね」

「あぁ」

「同志ルリシヤ先輩、これ何なんです?」

「俺がルレイア先輩に先輩呼びされるとは、何だかむず痒いな」

それな。

「何なのかと聞かれたら…まぁ、答えは一つしかない」

「…」

「これはこれだ。言うべきことは何もない」

…ですよねー。

いや、思ってるのとは違うものだぞ、とか言って欲しかったのだが。

やっぱり駄目だったか。

そうだな。世の中、そんなに上手くは行かない。

聞きたいことは、山程あるが。

まずは。

「じゃあこれは、俺達がよくよく知っている、あの『白亜の塔』で間違いないと?」

「概ね、仰る通りだ」

成程。最悪ですね。
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