The previous night of the world revolution~T.D.~
全く。

もう二度と見たくないと思っていたのに。

まさかシェルドニアではなく、ルティス帝国でこれを見ることになるとは。

「概ねということは、違うところもあると?」

「いくつかな。まず、見ての通りだが…本家に比べて、随分小型だ」

うん、小さいね。

本家様の方は、こんな小学校のクリスマスツリーみたいな、中途半端な大きさじゃなかった。

少なくとも、電柱くらいの高さはあった。

『ホワイト・ドリーム号』に装着されていたものだって、それなりの高さだったし。

それに比べて、俺の目の前にあるルティス帝国版『白亜の塔』は、随分小型化している。

「これはあれですか。技術革新の末、小型化に成功しました!ってことですか?」

発売当初の携帯電話みたいにさ。

最初に発売されたものはでっかいけど、時代を経るに連れて小型化して、今では手のひらサイズ!ってことですか。

手のひらサイズの『白亜の塔』とか、もう最悪じゃないか。

持ち運びも自由、ってか?冗談じゃない。

と、思ったが。

「いや、それは違う。この『白亜の塔』…呼び名を変えるのが面倒だから、便宜上ヒイラのつけた、『光の灯台』という呼び方にさせてもらうが」

えぇ、お好きにどうぞ。

「『光の灯台』は、厳密にはまだ『白亜の塔』ではない。あくまで、『白亜の塔』の模造品だ」

「模造品…」

「そう。サイズが小さいのは、技術革新による小型化に成功した訳ではなく、単にここの設備では、これ以上の大きさに出来なかったという理由が一つと、あとは技術も資材も資金も人員も、何もかもが足りてないからだ」

ふーん。

ついでに信頼も不足してるよな、あの男。

むしろ、足りてるものはあるのだろうか?

「じゃ、『効果』も本家ほどではないと?」
 
「あぁ。それどころか、本当に『効果』があるのかどうかも疑わしい」

なんか、一気に白けてきたんだけど。

意を決してここまで潜入してきた意味、ある?

「でも、ヒイラがあれだけ自信満々にドヤ顔晒すってことは、一応何らかの効果はあるんでしょう?」

「そうだな。少なくとも、博士は効果があると断言してる」

…博士…。

「効果としては…そうだな。『モーツァルトを聴きながら勉強したら、記憶力が良くなる』くらいのレベルだな」

胡散臭っ。

あれって、たまに聞くけどマジなの?

俺は迷信だと思ってるんだけど。

無音だろうが、モーツァルト聴きながらだろうが、『frontier』聴きながらだろうが、記憶力は変わらないよ。

結局は、そいつのオツムの問題だろ。

「それでも博士がヒイラに、『効果はある』と断言してるからな。ヒイラの方も、真に受けてるんだ」

「…へぇ…」

『光の灯台』が、本家である『白亜の塔』に遠く及ばないことが分かって、ひとまず安心したが。

それ以外にも、聞きたいことはある。
< 576 / 820 >

この作品をシェア

pagetop