The previous night of the world revolution~T.D.~
「で、ルリシヤ。さっきから気になってることがあるんですが」

「何だ?」

「その、博士ってのは何者です?」

ヒイラの話を聞くに、その博士とやらが、この模造品の種を持ってきたんだろう?

「サシャ・バールレン博士。『白亜の塔』の開発資料を持ってきて、『光の灯台』を開発した人物だ」

そんな奴が、『帝国の光』についているのか。

ヒイラも、とんでもない人間を味方につけたもんだ。

「そのサシャ博士とやらは、今何処に?」

「今は研究資料を探しに、上に出ている。ここに通うことになれば、明日にでも会うことになるだろう」

そうか。

まぁ、博士がここにいたら、俺達こうして普通に喋れないし。

外出してるんだろうとは思ってたが。

研究資料を探そうにも、ルティス帝国内じゃ、何処を探しても見つからないだろ。

「まず何人なんです?そいつ」

「シェルドニア人だ」

やっぱり、洗脳大国から来たんだ。

そうでなきゃ、『白亜の塔』の研究資料なんて、持ち出せるはずがない。

「何で、洗脳されているはずのシェルドニア人が、『白亜の塔』の正体を知ってるんですかね」

洗脳されている者は、基本的に、自分が「洗脳されている」とは思っていない。

当たり前だが。

洗脳されていることに気づかないから、洗脳されていると言えるのだ。

気づいちゃったら、その時点で洗脳は解けたということだ。それじゃ意味ないからな。

「あぁ、俺もそこは疑問に思ってな。それとなく本人に聞いてみた」

ほう。

「返事は何と?」

「どうも、シェルドニア貴族の端くれだったらしい」

「あぁ、それで洗脳を免れていたんですね」

あの国で、『白亜の塔』による洗脳を免れられるのは、一部の特権階級のみだ。

そういうことか…。

「何だってシェルドニア貴族の端くれが、『白亜の塔』の資料を持って、遥々ルティス帝国に来たんだか…」

「さて…。あまり探りを入れると怪しまれそうだから、そこまでは聞いていない…が」

「…が?」

「多分、大した理由じゃないだろう」

ルリシヤは、しれっ、としてそう言った。

…ふむ。

「そう思う根拠は?」

「俺の仮面の勘」

説得力が段違い。

じゃ、気にしなくて良さそうだな。
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