The previous night of the world revolution~T.D.~
…と、まぁこんな経緯がありながら。

いざ、子ども教育学部に、無事入学。

入学と言うより、潜入、の方が正しいか。

潜入に至って、俺はランドエルスにいたときと同じく、色々と変装してきた。

勿論、いつもの真っ黒ゴスロリ服は着られない。

残念だが、変に目立つのは良くないからな。

それに、一部の界隈では、俺の黒い死神の異名は知れ渡っている。

知る人が見れば、正体バレちゃう、って訳。

仕方ないので、あくまで変装用に買った、今時の大学生っぽい服を身に着け。

勿論、愛用の鎌もお預け。

あぁ、死神の異名に傷がつく。

更に、いつものメイクとネイルも、今回ばかりはお預けだ。

なんとこの学部、ネイル禁止らしいよ。

酷い校則だよな。

子どもと接するのに、ネイルは不衛生で駄目らしい。

成程、小学生くらいならともかく。

幼稚園くらいのガキなんて、猿も同然だからな。

キラキラ光るネイルを見たら、つっついたり、口に入れたりしたくなるのかもしれない。

そういう配慮があって、ネイル禁止だと。

あーつまんない。

それに、すっぴんっていうのも、内心気に食わない。

ネイルは禁止されているが、さすがに化粧までは禁止されていない。

女子学生もいる訳だし。

だから、メイクくらいはしても良いのだろうが。

世間一般的には、バッチリメイクを決めて、大学に通う男子学生…なんて、まず滅多にいない。

何度も言うが、スパイの仕事というのは、全く目立たないのも、逆に目立ち過ぎるのも禁忌。

他の男子学生が、当たり前のようにすっぴんなのに。

俺だけバッチリと、手慣れたメイクを決めていたら、そりゃ目立つだろう、ということで。

仕方なく、不本意ながらすっぴんである。

何だか恥ずかしい。

こんな、いかにも普通の男子学生らしい、普通の格好で、普通の顔で、普通に大学になんかいたら。

まるで、自分が普通の人間になったかのようで。

物凄く、違和感を感じる。

せめてファンデーションくらいは、許されても良いよなぁ…なんて。

思っていた、そのとき。

「なぁ、お前帝都から来たの?」

「はい?」

入学オリエンテーションが、一区切りついたとき。

前の席に座っていた男子学生が、くるりと振り向いて、俺に話しかけてきた。
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