The previous night of the world revolution~T.D.~
ルリシヤは、あの忌まわしいシェルドニア王国を巡る一件の渦中にいた一人。

短期間とはいえあの国に滞在し、『光の灯台』の本家である、『白亜の塔』がどういうものか、よく知っている。

何なら、そこの薄らハゲ博士よりも、ルリシヤの方が詳しいのでは?

そんなルリシヤが、知らないはずがない。

『白亜の塔』の情報など、ルティス帝国には全く伝わっていないのだということを。

縦ロール女王とその祖先達は、『白亜の塔』に関する情報を、厳重に守り続けてきた。

俺達がシェルドニア王国であの事件に巻き込まれて、初めて。

あの事件で初めて、俺達はシェルドニア王国に、『白亜の塔』なるものが存在することを知ったのだ。

実際に目にして、その「効果」を実感して初めて、その存在を信じることが出来た。

体験しなければ、単なる与太話にしか聞こえなかったことだろう。

そんな『白亜の塔』が。

その『白亜の塔』に関する資料が。

ルティス帝国に、存在するはずがない。

ルリシヤだって、そんなことは承知の上だろう。

それなのに、ルリシヤがわざと、ルティス帝国内で、無意味な資料集めを指示するということは。

少しでも、『光の灯台』の完成を遅らせる為の、撹乱なのだ。

時間稼ぎと言っても良い。

そして。

「どう思う?同志ルナニア。忌憚ない意見を聞かせて欲しい」

ルリシヤは、敢えて俺を名指しして尋ねてきた。

加入したばかりの、エリートな研究チームのメンバーに、意見を求める。

俺はこのチームの中で、最も高い学歴と、最も深い知識を持つ(と、されている)存在。

俺の発言が、大きな影響を与えることを知った上で。

ルリシヤは、俺に尋ねているのだ。

だから、俺が答えるべき言葉は。

ちゃんと、ルリシヤの意図に添ったものでなくてはならない。
< 584 / 820 >

この作品をシェア

pagetop