The previous night of the world revolution~T.D.~
「そうですね。俺も、同志ルニキスと同意見です。シェルドニア王国が確立した技術なら、ルティス帝国にも伝わっているはずです」

俺は、わざと神妙な顔をして発言した。

いかにも。研究者のような振りをして。

本当は、教育学部の学生なのに。

「そうか。同志ルナニアもそう思われるか…」

「…失礼ながら、同志サシャ博士。資料集めはどちらで?」

「ルティス帝国の、国立図書館だ」

そんな重要資料を、そこらの図書館に置いてる訳ないだろ馬鹿が。

馬鹿でも分かるわ。

全く以て時間の無駄遣い。この薄らハゲ、頭の表面どころか、中身もスカスカなのか。

だが。

お前が、そんな馬鹿で助かった。

逆に俺は、お前のそんな馬鹿なところを利用させてもらおう。

「成程。国立図書館は広いですし、数え切れないほどの文献が眠っています。一日や二日では、目ぼしい情報は見つけられないでしょう」

「うむ…」

「ルティス帝国国立図書館には、国内外問わず、多くの文献が記された書物が並んでいます。必ず、シェルドニア王国についての資料もあるはずです」

そりゃあるだろうよ、シェルドニア王国の本も。

しかし、そこに『白亜の塔』に関する記述は、一切ない。

断言出来る。

それでも俺は、さもそこに真実が隠されているかのように語ってみせた。

「時間をかけてでも、探してみる価値はあるでしょう。根気強く探し続ければ、必ず何か出てくるはずです」

「…そうだな、分かった」

馬鹿真面目な顔で、馬鹿なことを真面目な振りして言うと。

馬鹿な奴らは、同じく馬鹿真面目な顔で頷き、馬鹿な作業を続けることを決めた。

「同志ルナニアの言う通りだ。俺達も、国立図書館を探してみよう」

「そうですね。探しものをするには、図書館が一番です」

「ルティス帝国の未来の為にも、必ず『光の灯台』を完成させましょう」

そうだね。

君達開発チームが、この調子なら。

ルティス帝国の未来が変わるのは、遥か何千年も先になりそうで、俺は安心したよ。
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