The previous night of the world revolution~T.D.~
正直なところを言うと。

『光の灯台』の本家本元、『白亜の塔』の最大の被害者とされた俺でも。

『白亜の塔』の造り方なんて、知らない。

知ったことじゃない。

お前らだってそうだろ?毎日冷蔵庫を使ってるけど、その冷蔵庫の造り方なんて知らないだろ?

それと同じだ。

使い方は分かっても、造り方までは分からない。

この世にある、大抵のものはそうだ。

だが。

使い方と用途が分かれば、手探りながらでも、どんな風に造るのか、憶測は出来る。

冷蔵庫だったら、あんなに冷やすことが出来るんだから、何らかの冷却効果を持つ機能が使われてるんだろうな、とか。

それと同じで、『光の灯台』開発チームは、『光の灯台』の用途から、どうやってそれを造るのか推測しながら、開発を続けていた。

更には、薄らハゲ博士の持ってきた資料。

これをもとに、開発を進めているとか。

その資料を、俺も見せてもらった。

大したことは書いてなかった。

要約すれば、「無音で無味無臭の電波を発信し、人々を扇動する細長いスピーカー」程度。

そのくらい、説明されるまでもなく分かっている。

この調子なら、『光の灯台』が完成するのは遠い未来。

それでも万全を期す為に、俺は自分が大きな発言権を持っているのを良いことに。

頓珍漢な意見を出しまくっておいた。

「無音と書いてはいるが、実は知覚出来ないだけで音が出ているのではないか」とか。

「その音を聞き分ける為には、音楽の分野を調べるべきなのではないか」とか。

「実は、この機械で何らかの薬物を散布しているのではないか」とか。

「もしそんな薬物があるなら、化学的な分野から調べるべきなのではないか」とか。

そりゃあもう、思いつく限りの、とっちらかった意見をたくさん。

面白かったよ。

俺がこんなに、頓珍漢なことばっか言ってるのに。

他のメンバーは、何でも真剣に聞くんだもん。

ルティス帝国総合大学の、お偉い学生さんが言うことなら、間違っているはずがないと信じ込んじゃって。

しかも、薄らハゲ博士まで本気にしてるんだから、救えない。

本当に、何も知らないんだな、お前。

何でその資料持ち出せの?マジで。

ルリシヤは、他の開発チームメンバーの手前、同じく真剣な顔をして俺の意見を聞いていたが。

内心では、大爆笑だったに違いない。

俺だって、真剣な顔をして喋りながら、内心腹痛くなるほど笑ってたから。

この調子で、どんどん足を引っ張っていくスタイルで行こう。
< 586 / 820 >

この作品をシェア

pagetop