The previous night of the world revolution~T.D.~
「同志ルニキス。ちょっと良いか?」

「あぁ。どうした?」

彼は、人気のないところに俺を連れ出した。

勿論、あの研究について知られる訳にはいかないからだ。

あの忌まわしい、『白亜の塔』についての研究は。

そこのところ、ヒイラはどう思っているのか…。

「研究の進捗状況はどうだ?」

この共産主義の王様は、『白亜の塔』…ならぬ。

『光の灯台』について、とても気になるそうだ。

「そろそろ、使い物になりそうか?」

冗談じゃない。

「残念ながら、まだ実用段階には至っていない…というのが現状だな」

「そうか…」

ヒイラの落胆ぶりは、相当なものだった。

そんなに期待しているのか。

そうだろうな。

ヒイラの革命は、『光の灯台』なしには成功しないと言っても過言ではないのだから。

「如何せん、異国の技術だからな…。こちらも手探り状態なんだ。時間がかかって済まないが、もう少し待って欲しい」

「そうだな…分かったよ」

永遠に完成させる気はないがな。

この調子で、延々とのらりくらり躱し続けてやる所存である。

あまりやり過ぎるとヒイラの信用を失うので、そこは報告にも気をつけるが。

「…でも、いずれは完成するんだろう?」

なおもしつこく食い下がるヒイラ。

さて、この辺で飴…と言うか。

希望を与えておこう。今開発チームを解散されたら、それはそれで困るからな。

「勿論だ。そもそも、シェルドニア王国が既に確立している技術なんだ。全く未知の代物って訳じゃない。いずれは、ルティス帝国の技術でも本家に追いつける。それは保証する」

「そうか!それは良かった。それを聞いて安心したよ」

…ちなみに。

今の俺の言葉は、嘘ではない。

シェルドニア王国は大国だが、ルティス帝国だってそれに負けず劣らずの国力を持っている。

たまたま、現在シェルドニア王国が「その方面」に特化した研究が進んでいるだけで。

ルティス帝国でも、本腰を入れて研究に取り組めば、『白亜の塔』と同じものを作ることは可能だ。

ただ、やらないだけで。

まともな神経をしていたら、そもそもあんなものを製造しようとは思わない。

国民を騙し、洗脳し、権力者の思うがままに操る為の装置なんて。
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