The previous night of the world revolution~T.D.~
そもそも何故、シェルドニア王国であのような…『白亜の塔』が建設されたのか。

それは、彼の国の権力争いが発端となっている。

まだ記憶に新しい、シェルドニア王国での『ホワイト・ドリーム号』での事件…。

あのとき俺は、ルルシー先輩とイチャイチャ同棲しながら、シェルドニア王家の歴史について調べた。

あの国は、二つの王族が、代々競うようにして王座を巡って争ってきた。

俺達があんな事件に巻き込まれたのも、それが原因だった。

二つの王族が争う度、国民はその諍いに巻き込まれ、疲弊し、王族への不満を募らせていった。

ついに、その不満が爆発しそうになったとき。

ようやく国民の反王政運動に気づいた時の国王が、慌てて開発したのが『白亜の塔』だ。

反発する国民を黙らせ、自分達に都合の良い国造りをする為に。

お陰で今では、突然国王が変わろうが、その国王に先王の暗殺疑惑がかけられようが、国民達はにこにこと、素知らぬ顔。

全く疑うことを知らない。

そういう風に、操作されているからだ。

あの国で生まれ、あの国で育ち、成長した人間は。

一部の特権階級を除いて、全員が『白亜の塔』によって長年の洗脳を受けている。

『白亜の塔』も、国民の心も、国中にあるもの全てが真っ白で。

それでいて、その裏側にあるのは真っ黒な権力者の野望。

それこそ、大国シェルドニア王国を支えている基盤なのだ。

皮肉な話だがな。

…そして。

今、目の前にいるこの男。ヒイラ・ディートハットは。

俺達の祖国であるルティス帝国を、その洗脳国家シェルドニア王国に習おうとしているのだ。

シェルドニア王国の実態を知る者として、そして。

ルティス帝国の裏社会を支える者として、そのような蛮行は、断じて許されることではない。

…と、いう愛国心は偽りで。

結局のところ俺は、ただ自分が洗脳されたくないだけだ。

誰だってそうだろう?

国が、どんな政策をしようが勝手だが。

それが自分の身を脅かさないなら、好きなことをすれば良い。

ただ、その政策によって、自分の身が脅かされるなら。

そのときは、黙ってない。

それだけの話だ。
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