The previous night of the world revolution~T.D.~
「…それで」

と、ヒイラが切り出した。

「あの新入りはどうだ?信用出来そうか」

新入り。

それはつまり…。

「同志ルナニアのことか」

「あぁ」

同志ルナニア、ルレイア先輩のことだな。

言うまでもなく、俺のスパイ仲間である。

ヒイラが、ルレイア先輩を警戒するのは当然のことだ。

開発チームのメンバーは基本的に、俺のように、一定期間『帝国の光』にいて。

ヒイラから直々に、「こいつは信頼出来る」と認定された者だけが、加入することを許される。

新入りが、あの地下武器庫を見せられるだけでも、異例なのだ。
 
ましてや、『帝国の光』にとって極秘中の極秘である、『光の灯台』の存在を明かすなど。

ヒイラにとっては、まだ信用ならない新入りにあれを見せるなど、内心穏やかではないのだろう。

だが。

「そんなに信用ならないか?」

「いや…そういう訳じゃないが…」

否定はしているものの、「うん。全然信用出来ない」って顔に書いてある。

「俺が見たところは、大丈夫そうだ。それに、彼はルティス帝国総合大学で、確か…『ルティス帝国を考える会』という共産主義サークルに入っている人物だろう?」

「それはそうだが…」

「しかも、そこで熱心な働きをしていたと聞いた。彼は根っからのコミュニストだ。心配要らない」

全く、嘘八百とはよく言ったものだな。

俺の場合、もう『帝国の光』に来てから、八百どころか。
 
八千くらい、嘘ついてる気がする。

「それに何より、俺達には知識を持った人物が必要だ」

「…」

今、ルレイア先輩を開発チームから追い出される訳にはいかない。

ここは、全力でルレイア先輩は信頼に足る人物だと、アピールしておかなくては。

「『光の灯台』について、俺達はまだまだ知らないことが多過ぎる。『光の灯台』の完成の為にも、知識を持った人物が必要だ。そこに、ルティス帝国総合大学の学生はうってつけだろう?」

「…そうだな」

他の開発チームメンバーと同じく。

ヒイラもまた、ルティス帝国総合大学というブランドは、魅力的に見えるはず。

学部や学科など関係ない。

ただ、「国内最高峰の大学で、優秀な成績を上げている学生」というだけで、物凄く頭の良い人のように思える。

確かに、ルレイア先輩の頭が良いのは確かだ。

あの、帝国騎士官学校を主席で卒業したくらいだからな。

とはいえ、さすがのルレイア先輩も、『白亜の塔』の造り方など知らない。

あれはルティス帝国ではなく、シェルドニア王国の技術だからだ。

ついでに言うと、俺も知らない。

知りたくもない。

「それに、あの学生…。予想以上に、戦力になってくれそうだぞ」

俺は、なおもルレイア先輩の信用度を上げる為に、そう言った。

「そうなのか?」

「あぁ。さすが名門大学の学生だな、発想が違う。様々な観点から、研究を進めることを提案してくれた」

音楽の分野から調べたらどうか、とか。

薬学について調べたらどうか、とか。

『白亜の塔』の実態を知っている俺としては、思わず笑ってしまいそうだったのだが。

多分ルレイア先輩も、内心大爆笑だったに違いない。
< 590 / 820 >

この作品をシェア

pagetop