The previous night of the world revolution~T.D.~
「様々な観点…か…」

「折角提案してくれたんだ。彼の意見を採用して、様々な観点からアプローチを試みることになったよ」

「…サシャ博士も承知したのか?」

「勿論だ」

肉まんを買いに、飛行機に乗って他県まで出掛けるようなものだ。

近所のコンビニにあるのに、わざとめちゃくちゃ時間をかけて、ついでに金もかけまくって、遠回りする。

そうすることで、『光の灯台』の完成を遅らせる。

ルレイア先輩もそのつもりで、あんな頓珍漢な提案をいくつもしてくれたのだ。

活かさない手はない。

そもそも俺達には、『光の灯台』を完成させるつもりなどないし。

ハナから、科学者でもない俺達素人に、『白亜の塔』など造ることは出来ない。

少なくとも、俺が集めた、ルレイア先輩以外全員ポンコツ研究者では、とてもではないが不可能だ。

あのメンバーで『白亜の塔』を再現しようとしたら、多分何千年たっても足りない。

わざとそういうメンバーを集めたのだ。研究を妨害する為に。

「…何だか、随分遠回りだな」

ぎくっ。

さすがのヒイラも、あまり完成を引っ張り過ぎると疑い始めるか?

だが、ここで狼狽えたら、俺とルレイア先輩の苦労が水の泡だ。

冷静に対処すれば良い。

「仕方がない。新しいものを作ろうと思ったら、どうしても人と手間と金がかかる。俺達は少数精鋭でやっているから、余計に」

「それは分かってる。でも…出来るだけ急いでくれないか。ルティス帝国の未来が懸かってるんだ」

せっかちだな。

急いては事を仕損じる、ということわざを知らないのか。

まぁヒイラの場合、出来るだけ急いて、事を一気に片付けるしか、革命の方法はないからな。

急がなければ、今は浮かされている党員達の熱が、冷めてしまう。

その前に、ルティス帝国を変えたいのだろう。

その気持ちは分かるが。

だが、そうはさせない。

「勿論、俺もそれは分かってる。出来る限り急いでいるつもりだ」

「…」

「心配するな。必ず『光の灯台』を完成させる。ルティス帝国の未来の為に」

「…あぁ、そうだな」

ヒイラは、ようやく笑顔を見せた。

いつもの、明るい笑顔だった。

「期待してる。お前が頼りだよ、同志ルニキス」

「ありがとう。そう言ってもらえて光栄だ」

…さて。

これで、上手く躱すことが出来たかな。
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