The previous night of the world revolution~T.D.~
だが、ここで『表党』とか、『裏党』といった言葉を出す訳にはいかない。

『表党』に所属する党員は、自分達が表と裏に区別されていることを知らないのだから。

「何だか、たまに見かけるよね。いつものメンバーの中に、見慣れない顔がいること」

「…」

「で、その人がいきなり出てきて、仕切ったりするじゃない?あの人達って、何なのかしら」

と、私が話を振ると。

「…言われてみれば、何度か集会でそんなことあったなぁ」

彼女は、腕組みをして思案し、そう言った。

「普段は見かけない人が、集会を仕切ってるの。誰なんだろうと思ってたけど…」

やっぱり、思い当たる節があるようだ。

それはそうだよね。

「こう言っちゃなんだけど、何だかあの人達って、結構上から目線だと思わない?」

ここぞとばかりに、ぐいぐい食い下がってみる。

「上から目線って?」

「あの集会を仕切ってる人達。私達、同じ『帝国の光』の党員なのに…。何だかいつも諭されてるみたいな口調で、感じ悪いな」

「あぁ…。確かに、そういうところあるよね」

「この前の集会も、『君達はもっと革命精神を高めなければならない』って、命令口調だったじゃない?」

私は、先日行われた『表党』での革命集会のことを思い出しながら、そう言った。

壇上に立って私達に指示しているのは、間違いなく『裏党』の党員。

『裏党』の党員は、明らかに『表党』の党員を下に見ている。

革命精神が足りない、『帝国の光』の雑兵扱い。

『表党』の党員と違って、『裏党』の党員は、自分達が『裏党』の党員であることを知っている。

「自分達は組織の中でも選りすぐりの、選ばれた存在である」という意識がある。

あのヒイラ・ディートハット党首に才覚を認められた、選ばれた人間なのだと。

人間であれば、誰だってそういう区別をされたら、驕り高ぶるのは当然だ。

そして、下に見られた者は、そんな上の人達を妬む。
 
それも当然だ。

「あぁ、それなら覚えてるわ。確かに、あれはちょっとムッとしたかも。私達に革命精神が足りないなんて、何であの人が決めつけるのかって」

それはあの人が『裏党』の党員で、私達が『表党』の党員だからだ。

『裏党』の人にしてみれば、『表党』の人は皆、革命精神の足りない未熟者扱いなのだ。

「あれは不愉快よね。私達は、皆平等なはずなのに」

「そうだけど…。でも、あの集会では、たまたまそういう人が仕切ってただけかも…」

ここだ。

「…ね、ここだけの話」

私は、声を潜めて、そう切り出した。
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