The previous night of the world revolution~T.D.~
二人共、『表党』だからか、それとも単に、目の前の単調な仕事が面倒臭いのか。

うんざりしたような顔で、ひたすら書類整理を続けていた。

書類整理と言えば聞こえは良いけど。

講演会などで配る冊子を、ひたすらホッチキスでパチンパチンと留めているだけだ。

要するに、雑用係だな。

こんなことを延々とさせられていたら、そりゃうんざりもする。

僕達の目の前には、まだまだたくさんの書類の山が待ち構えている。

三人でこなすには、まだたっぷり時間がかかりそうだ。

二人から溜め息が聞こえてきそうな、そのとき。

このときを狙って、僕は口を開いた。

「…あ、そうだ」

「…?」

「どうかした?」

僕は、さも今思い出したかのように切り出した。

「ちょっと疑問なんですけど、お二人共、このビルに入ってる他のテナントさんについて、何か知りません?」

思い出して頂きたいのだが。

僕はルリシヤさんから裏情報を聞いているので、『帝国の光』が表と裏に分かれていることも、

このビルが、『帝国の光』所有のビルだということも知っているが。

『表党』の党員には、知らされていない。

『帝国の光』は、あくまでこのビルの四階だけを借りて、ここを拠点にしていると思っている。

集会とか講演会とか、このフロアにある会議室で収まらない大人数が集まるときは、他の会議室やホールを借りていると。

「他の…?別の階のことだよな?」

「そうですね」

「なんか企業が入ってるんじゃないのか?看板出てるじゃないか」

「そうそう、下の三階は眼科なんだろ?看板で見た」

確かに、ビルの前に設置された看板には。

ヒイラが目眩ましの為に、適当な名前の企業や、眼科クリニックの名前を表示している。

あとは、二階は「募集中」などと、適当なこと書いてたっけ。

募集なんてしてない癖に。

「でも、それにしては、企業の人が出入りしている様子や、眼科のスタッフや患者が出入りしているところって、見たことないなぁと思いまして」

「…!」

「…そういえば…」

退屈な二人は、僕の話に食いついてきた。
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