The previous night of the world revolution~T.D.~
「言われてみれば…確かに、俺も見たことないな」

「でしょう?それに、三階は眼科なのに、近くに薬局もないですよね。普通病院の近くって、薬局も併設されてるのに」

「確かに…この辺に薬局はないな」

院内処方の可能性もあるが、まぁ大抵クリニックの近くには、薬局が併設されていることが多い。

しかし、この近辺に、薬局はない。

それに、他の階に企業が入っているなら、職種にも寄るだろうが、もっとそれなりに、人の出入りは激しいはず。

僕達が、見かけないはずがないのだ。

そして。

「それに、エレベーター」

「エレベーター?」

「入ったときは、偶然壊れてるだけだと思って、気にしてませんでしたけど…。僕が入党してから、ずっと故障中じゃないですか」

「あぁ…そういえば、そうだな」

二基あるエレベーターのうちの、片方。

片方は、未だに故障中のまま。

だから『表党』である僕達は、もう片方の『表党』専用エレベーターのみ、使うことを許されている。

「あれ、直してもらえないんですかね?このビル、八階建てで、他のフロアにも企業やクリニックが入ってるのに、エレベーターが一基しか稼働してないって…」

「あぁ…。確かに、あれ不便だよな。俺もここに来るのに、五分くらいエレベーター待たされたことあるよ」

「そういえば、俺が入党したの春だったけど、あのときからずっと修理入らないままだな」

君は、春に入党しておきながら。

エレベーターがずっと故障中のままでいることに、疑問を抱かなかったのか?

おめでたい頭ですね。

「あれじゃね?ここ貸しビルだし、ビルの持ち主が金を渋って、直さないだけなんじゃないの?」

「そうかもしれませんけど…。それにしたって、八階中ほぼ全部のテナントが埋まってるのに、エレベーター直さないっていうのも変な話ですよね」

「言われてみれば、そうだな…。何で直さないんだろう…」

「…それに」

僕は、声を潜めて言った。

「知ってます?あの故障中のエレベーター、実は動いているって噂もあるんですよ」

何だか、若干ホラーに感じる発言だが。

そういう意味ではないので、あしからず。
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