The previous night of the world revolution~T.D.~
「…悪かったよ、アイズ」 

相棒を、他でもない自分以外の人間に預けるなど。

相当の覚悟がなければ、そんなことは出来ない。

アイズは、その覚悟をして…アリューシャを手元から離す決意をしたのだ。

「ううん、良いよ。ルルシーなら大丈夫だって信じてるから」

「…ありがとう。信用してもらえて嬉しいよ」

自分の相棒を預けるに値する人物なんて、そうそういるものではない。

少なくとも、俺にとってはそうだ。

そして、きっとアイズにとっても。

こいつなら大丈夫だ、という確信がない限り、決して預けることなど出来ない。

俺は、アイズにとって、相棒のアリューシャを預けるに値する存在だと信じてもらえ、

「ルルシーなら、普段アリューシャよりもっと厄介な相棒の世話をしてるから、安心して任せられると思ってね。少なくともアリューシャは、誰かさんの相棒みたいに、暴走機関車になったりはしないから」

「…全く、誰のことだろうな…」

俺のこと言ってるのか?なぁ。俺のことか?

説得力が段違いだな。

成程、そう考えると、アリューシャの子守くらい、全然大したことがないような気がしてきた。

「アリューシャのことお願いね、ルルシー」

「…分かったよ」

引き受けるよ。

もとより、俺もその覚悟だからな。

「良い?アリューシャ。ルルシーの言うことはよく聞いてね。いつもみたいに、良い子にするんだよ」

と、アリューシャに言い聞かせるアイズ。

完全に、幼稚園児に言い聞かせる保護者の図。

それなのに、アリューシャは。

「任せろ!ルル公の面倒くらい、アリューシャ一人で見られるよ」

ズレてる。

誰がお前に面倒見てもらうかよ。お前は面倒見られる側だろうが。

「じゃあ二人共、気をつけてね。行ってらっしゃい」

「あぁ。行ってくる」

「行ってくるぜ!あばよ!また会う日まで!」

搭乗ゲートで、最後の別れを交わし。

俺とアリューシャは、アイズに手を振ってゲートを潜り抜けた。
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