The previous night of the world revolution~T.D.~
「…なら、俺が今から聞くことを、お前が知っている限り、嘘偽りなく全て話せ。回答を拒否することは許さない」

どうしても、アシミムを出したくないと言うなら。

まずは手始めに、お前から尋問だ。

「…分かった」

ルシードも、その条件を呑んだ。

いずれにしても、ルシードにも聞くつもりだったのだ。

ルシードは、アシミムの腰巾着。アシミムに話を聞くときには、どうせこいつも同席しているだろう。

なら、先にルシードに聞いても問題ない。

「単刀直入に聞く。シェルドニア王国は、ルティス帝国に喧嘩を売るつもりか?」

俺がそう尋ねると、ルシードは眉をひそめた。

「…言っている意味が分からない」

「ルティス帝国に危害を加えるつもりか、と聞いてる」

「…!何故そうなる?」

「それはこっちの台詞だ」

俺とアリューシャが、わざわざ身分を隠してまで、シェルドニア王国にやって来た理由。

アイズレンシアが、「確かめなければならない」と言ったからだ。

シェルドニア王国の女王であるアシミムから、直接。

『帝国の光』が所有する、『白亜の塔』に関する開発資料。

それを持ち出したのは、シェルドニア王国の貴族の端くれだと聞いている。

でも、それっておかしくないか?

シェルドニアにある、『白亜の塔』に関する情報は、シェルドニア国民でさえ知らない極秘の情報。

ましてや、国外に知られるなど、シェルドニア王国としては絶対に避けたいことのはず。

先王暗殺事件の経緯があって、ルティス帝国は、その事実を知っているが。

シェルドニア王国との交友関係維持の為、敢えて諸外国には黙っている。

ルティス帝国でも、その事実は帝国騎士団の隊長達と、俺達『青薔薇連合会』の幹部以上の人間しか知らない。

それほど極秘に守られてきた情報が、何故ヒイラに…ルティス帝国の一般人に過ぎないヒイラに、伝わっている?

そんな秘密兵器の情報を知れば、ヒイラでなくとも、悪用を考えるだろう。

恐らくヒイラが、『帝国の光』という組織を起ち上げたのも、『白亜の塔』に関する開発資料を手に入れたからだ。

サシャ・バールレンという男が、ヒイラにそれを持ってきたから。

博士と呼ばれるあの男が、いつルティス帝国に来たのかは知らないが。

ルチカが『天の光教』でルティス帝国国内を騒がせていた頃には、『光の灯台』なんて言葉は、一つも聞かなかった。

つまり、サシャ・バールレンがやって来たのは、ルチカが逮捕され、『天の光教』が崩壊した後だ。

『天の光教』がなくなり、元信者達が失意に沈んでいるところに。

ここぞとばかりに、サシャ・バールレンが現れた。

シェルドニア王国の秘密、『白亜の塔』に関する開発資料を持って。

それを一般人に与え、『白亜の塔』について研究させ、『白亜の塔』の再現…『光の灯台』…を造らせれば。

ルティス帝国国内が荒れることは、容易に予想出来る。

さて、ここまで聞いて。

もしかして、今ルティス帝国を騒がせているこの事件。

何もかも全て、『白亜の塔』に関する資料を持ち出すことを許した、シェルドニア王国の陰謀なのではないか、と。

疑いをかけるのは、当然の道理ではないか?
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