The previous night of the world revolution~T.D.~
「国内にいると思っていたんです。まさか国外に出ているなんて、思ってもみなくて…。もし国外に出ていると知っていたら、私も…」

…すぐに、アシミムに報告したとでも?

で、それが言い訳になるとでも?

そう言いたいのか?お前は。

「弟は…サシャは、本当に…昔から、バールレン家の嫡子としての自覚がなく…。私も、手に余る始末で…」

…そうか。

悪いのは弟で、自分ではない、と?

自分も弟には手を焼いていて、始末が負えなかったと?

確かにそうなのかもしれないな。

兄弟喧嘩の発端も、不貞腐れて『白亜の塔』の開発資料に手を出したのも。

それを持って、ルティス帝国にやって来たのも。ヒイラと協力して、『帝国の光』を立ち上げたのも。

『光の灯台』の開発に着手したのも。それによってルティス帝国を脅かしているのも。

全てはお前の弟がやったことで、テナイがやったことではない。

そうだな。

それだけは認めるよ。一番悪いのは、お前じゃない。

…でもな。

『…ルル公。やって良い?』

インカムから、アリューシャの低い声が聞こえた。

殺意の声だ。

「いや、やめておけ」

その怒りは、こいつの弟に取っておけ。

それに、本当にテナイ・バールレンに手を出したら、それこそ国際問題に発展しかねない。

バールレン家が、代々『白亜の塔』の開発資料を受け継いでいるのは、揺るがない事実なのだ。

ならば、後の為にも、過剰にこの一族を攻撃するのはよした方が良い。

…だが。

「す、全ては弟の不徳の致すところ。わ、私は、」

テナイは、それ以上言葉を発することが出来なかった。

バキッ、と骨が砕けるような音がして、テナイがみっともなく床に倒れ伏した。
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