The previous night of the world revolution~T.D.~
これで、私達が相手にしなければならないものの正体が分かった。

サシャ・バールレンは、大した脅威ではない。

私達の敵は、『帝国の光』。

ひいては、『帝国の光』のリーダー、ヒイラ・ディートハットだ。

ヒイラは、サシャ・バールレンと違って馬鹿ではない。

ヒイラがサシャと同じく、力に魅了されただけの馬鹿なら、もっと話は早かったのだろうが。

残念ながら、ヒイラはそこまで馬鹿ではない。

馬鹿ではない敵を相手にするのは、いつだって厄介だ。

…しかし。

ヒイラが本当の意味で脅威になり得るのは、『光の灯台』が完成したら、の話だ。

『光の灯台』が完成してしまえば、最早ヒイラを止める者は誰もいなくなる。

本当に、ルティス帝国はシェルドニア王国と同じ、洗脳国家に成り果てる。

『光の灯台』さえなければ、いかに「馬鹿ではない」ヒイラでも、私達の前にはただの血気盛んな青年に過ぎない。

言うなれば、単なる一般人だ。

『光の灯台』という切り札があるから、ヒイラは脅威となり得る。

「馬鹿ではない」彼なら、切り札の使い方を知っている。

『光の灯台』の製造法が、秘密裏に確立され、量産されて、ルティス帝国の各地に散らばったら、どうなるか。

…考えたくもないな。

でも、考えなければならない。

ヒイラ・ディートハットの野望を阻止する為には、最悪の事態も想定しなければならない。

そして、何より幸いなことに。

未だに、『光の灯台』は完成しておらず。

しかも、ヒイラの虎の子である『光の灯台』の開発チームには、頼もしい私の仲間達がいる。

彼らが、開発チームの足を引っ張り、可能な限り開発を遅らせてくれている。

それに、『帝国の光』の『表党』には、ルーチェスとシュノがいる。

二人も、『帝国の光』を瓦解させる為に、手を尽くしてくれている。

「…大丈夫。私達なら」

自分に言い聞かせるのではなく、確信を持って、私はそう言った。

もう、自信を失うようなことはない。

仲間を、家族を信じるように、自分を信じれば良い。

彼らなら、上手くやってくれる。

そして、全てが私の思惑通りに事が収束した後。

ヒイラ・ディートハットは、知ることになるだろう。
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