The previous night of the world revolution~T.D.~
「おはようございます、エリアス…。じゃなくて、同志エリアス」

「あぁ、良いよ良いよ。『帝国の光』の中ではともかく、普段のときは普通に呼び合おう。俺達は同志である前に、友達なんだから」

友達(笑)。

まぁ、思い込むのは勝手だよな。

「じゃあ、エリアスと呼ばせてください」

「うん、そうしてくれ。俺もルナニアって呼ぶから」

好きにしてくれ。

いずれにしても、偽名なんだからさ。

「ルナニアも、これから『帝国の光』の本部に行くんだろ?」

「そうですよ。エリアスもですか?」

「あぁ。俺もそうなんだ」

そうですか。

「全く、夢みたいだよなぁ」

…?

お前の頭の中が?

「こうして、あの『帝国の光』の一員になれて…しかも、同志ヒイラに信用された、『裏党』の党員になれて」

はぁ。

そんな、目をキラキラさせて言うことか?

「『帝国の光』専用の社宅にまで住まわせてもらえるなんて。こんな名誉、他にないよな」

…。

…ルティス帝国総合大学の学生、っていう肩書の方が、世間的には遥かに立派だと思うけど。

お前とは価値観が合わないな。最初からだけど。

あんな監視付きボロアパートに住まわされて、あれが名誉だって。

「確かに、誇らしいですよね。『裏党』の党員だって、社宅に住まわせてもらえる党員は、ごく少数だそうですし」

「そうだよ。本当に名誉なことだよなぁ」

「…でも、エリアス。ちょっと気になることがあるんですけど」

別に、他意がある訳ではない。

単なる鎌掛けだ。

「気になること?」

「えぇ。何だかあの部屋って…誰かに見られてる気がしません?」

「えっ」

俺が声をひそめて言うと、エリアスは驚いたような顔をした。
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