The previous night of the world revolution~T.D.~
一通りの質問攻めを、何とか回避し。

「それじゃ、そろそろ帰りますね」と言うと。

俺は『ルティス帝国を考える会』の会員達から、金を握らされた。

要するに献金だ。

これを、『帝国の光』の為に使ってくれ、と。

軽く封筒が膨らむほどの札束を、託けられてしまった。

…良い迷惑だよ、全く。

何処から調達した金なのかは知らないが。

彼らもまさか、この金が、粗悪な武器の購入や、訳の分からんチートアイテムの研究に使われているなんて、思ってもみないだろうな。

金の用途を知ったら、彼らは今まで投資してきた献金について、どう思うのだろう。

よっぽど本当のことを言ってやりたかったが、それはまだ我慢我慢。

そして、帰り際。

「…ルナニア君」

ルーシッドが、控えめに声をかけてきた。

よう、久し振りだなルーシッド。

ちょっと老けた?

そんな君に、ハイビスカスをおすすめしよう。

で、何の用だ?

『帝国の光』に選ばれたエリート様の俺に、『ルティス帝国を考える会』の落ちこぼれが、何の用がある?

「どうしました?」

「『帝国の光』に認められ、選ばれたあなたのことを、俺も誇りに思ってる。他の皆も、いつも君とエリアス君のことを称賛してるよ」

それはどうも。

ルーシッドは、俺の両手を取って、励ますように言った。

「これからも、ルティス帝国をより良くする為に、お互い頑張ろう」

「…そうですね。立場は違えど、気持ちは同じ。一緒に頑張りましょう」

俺は、笑顔でそう答えたが。

俺の関心は、先程ルーシッドが俺の手を取ったとき。

俺の手の中に握らせてきた、小さな紙片にあった。

久々に『ルティス帝国を考える会』を訪ねてから、ずっと感じていたこと。

そのヒントが、この紙片に書かれているのだと思うと。

最早、音楽療法のレポートどころではなかった。






…の、だが。

「ルナニア君!」

大学の門を出ようとしていた俺を、エリミア・フランクッシュが呼び止めた。
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