The previous night of the world revolution~T.D.~
ちっ。

面倒臭い奴につかまった。

何の用だ?俺は今から、音楽療法レポートの作成に忙しいのだが。

それでも、俺はまだ『ルティス帝国を考える会』の一員。

会長自らのお言葉であれば、頂戴しない訳にはいかない。

俺は、笑顔で振り向いた。

「どうしたんですか?エリミア会長…」

「あぁ、良かった追いついて。もう帰っちゃったかと思った」

今帰ろうとしてたんだよ。見たら分かるだろ。

「ちょっと、話したいことがあって」

「…話、ですか?」

長くなりそうな感じ?

出来れば、早く帰りたかったんだけど。

もしかして、自分も『帝国の光』に入りたいから、ヒイラに直談判してくれ、とか?

そういう用件はお断りだ。

「『帝国の光』でのことなんだけど」

あ、でもなんかそんな感じの流れ。

言っとくが、俺は確かに『帝国の光』の『裏党』の党員で、『光の灯台』開発チームのメンバーに選ばれてもいるけれど。

ルリシヤと違って、ヒイラからの信頼は、一切得ていないんだからな。

そういう用件はお断り、

「エリアス君はどうしてる?元気?」

…あ?

「あ、はい…。この間も会いましたけど、元気そうでしたよ」

元気に…。

…札束数えてるそうです。

「そうなんだ、良かった…。ほら、『ルティス帝国を考える会』から『帝国の光』に推薦したの、私だから。どうしてるのかなって気になって」

そうですか。

「でも、凄いわよね。『帝国の光』に入って間もないのに、経理の仕事を任されるなんて。信用されてるのね、彼」

まぁ、そう思い込むのは自由だよな。

いや、あの人機械でも出来る仕事、延々とやらされてるんですよ、とも言えず。

あれは本当に、機械導入するべきだよなぁ?

あんな作業を延々とさせられて、うっかり数え間違えてたらどうするんだよ。

とはいえ、本人は「これもルティス帝国の未来の為…」とか、ふざけたこと抜かしてるから。

本人が満足なら、好きなようにやらせておけば良いのかもしれない。

「…ところで、ルナニア君」

「はい」

「折り入って、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」

来た。

ただの近況報告を尋ねに来ただけかと思わせておいて。

本命っぽいのが来たぞ。

「何でしょう?」

内心うんざりしながら、俺はエリミア会長の言葉を待った。

「『帝国の光』から党員の方を派遣してもらって、小規模で構わないから、講演会を開いて欲しいの」

…ん?

なんか、ちょっと予想外の依頼が来たぞ。
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