The previous night of the world revolution~T.D.~
「どういうことですか?」

率直に、事情を尋ねてみる。

すると、エリミア会長は、顔を曇らせて言った。

「『帝国の光』の党員になった君に、こんなことを言うのはとても恥ずかしいし、不甲斐ないんだけど…。実は今、『ルティス帝国を考える会』は、凄く結束力が弱まってきてるの」

あぁ。

そういう話ね。

実のところ、それは知ってる。

だって、もう部室に入ったときの空気からして、変わっていたから。

俺の知る、以前の『ルティス帝国を考える会』ではなくなっていた。

俺がいたときは、もっとあのサークルは、熱気に満ちいていた。

自分達こそがルティス帝国を変えるのだ、という意気込みがあった。

会のメンバーも、もっと多かった。

しかし、今日俺が『ルティス帝国を考える会』の部室を訪ねたとき。

俺がいた頃より、半分以下にメンバーが減っていた。

そして、昔あったあの熱気も、意気込みも、前より薄くなっていた。

それに、ルーシッドが握らせてきた紙片。

『帝国の光』のアパートに帰ったら読めないので、さっき開いてみたが。

そこには、短い一文が書かれていた。

「『ルティス帝国を考える会』は、結束力が弱まっています。内部崩壊は遠くないでしょう」とのこと。

俺と違って、あいつはずっと『ルティス帝国を考える会』にいたからな。

会の事情については、ルーシッドの方がよく知っているだろう。

「結束力が…。それって、どういう意味ですか?」

分かっていながら、俺はそう尋ねた。

「…仕方ない部分もあるんだよ。新入生は皆、段々講義や課題が忙しくなってきて…。サークル活動に割ける時間が少なくなって」

「でも、古参のメンバーもいらっしゃるでしょう?」

「そうなんだけど…。他のサークルと掛け持ちしてる学生もいるし、皆実習や就活で、忙しいんだよ」

忙しい、というのは方便だな。

そんなの、大学に入ったときから変わらないじゃないか。

以前なら、他のサークルと掛け持ちしていようが、『ルティス帝国を考える会』の方を優先していたし。

実習だの課題だの、そんなの今に始まったことじゃない。

つまり…。

「今一度皆の結束力を固めて、気を引き締める為にも…。『帝国の光』から人を呼んで、激励して欲しいんだ。そうしたら、皆戻ってくると思うから」

そう。戻ってくる。

つまり皆、よそに行ってしまったのだ。

『ルティス帝国を考える会』より、もっと優先すべきことが出来た…と言うより。

熱が、冷めてきたのだ。

何やら壮大な、ルティス帝国の未来なんかよりも。

自分の現実的な、今日明日の生活の方が、大事になってきたのだ。
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