The previous night of the world revolution~T.D.~
別に驚きはしない。

いつか、いずれ、そうなると思っていたから。

と言うか、今までがおかしかったのだ。

ルティス帝国の未来の為、という大義名分に踊らされ、自分達若者ならその未来を変えられる、という熱に浮かされていた。

でも、熱はいつか冷める。

夢だって、いつかは覚める。

皆、目が覚めてきたということなのだろう。

「あれ?俺、何馬鹿なことやってたんだろう?」ってな。

気づくのおせーよ、馬鹿。

それに、あの献金。

借金したり、貯金を切り崩してまで、『帝国の光』に貢ぎ。

後になって通帳を見て、自分がいかに浅はかなことをしたかに、今更気づいたんじゃないか?

熱は冷め、やっぱりルティス帝国の未来より、自分の今の生活の方が大事になってきた。

金を貢いでも貢いでも、自分の生活が苦しくなるばかりで、国が変わっている様子を自分の目で見ることは出来ない。

なら、何の為に献金したのか分からない。

いくらあの部室で、偉そうなことを議論したところで。

それで何かが変わる訳じゃないし、何なら、今日の夕飯の献立を考えることの方が、余程有益だと気づき始めた。

何度も言うが、お前ら気づくのおせーよ。

ヒイラが、アホみたいに『光の灯台』の完成を急ぐ理由が、これだ。

ヒイラは、サシャの馬鹿と違って賢い。

彼は知っているのだ。

今、ルティス帝国の若者達が熱に浮かされているのは、これは一過性のもの。

『天の光教』事件が置き土産に残していった、残滓みたいなものだ。

事件が収まり、人々の記憶から消えていくと同時に。

若者達の革命精神もまた、段々と薄れていく。

そんなことより、自分の今の生活の方が大事になってくる。

そう思うのは、人として当然の心理なのだけれど。

しかし、一部の、それこそヒイラの言う真の革命闘士は、この状況が面白くない。

それもそうだろう。

ついこの間まで、自分の意見に賛同し、熱意溢れる若者達が、自分の周りに集まっていたのに。

段々と、一人二人と、その輪の中から抜けていく。

「あれ?やっぱり革命なんてどうでも良くないか?」と思う人が増えていく。

これはひとえに、ルーチェスやシュノさん達が、熱狂的な共産主義集団を潰したり。

ルリシヤが、『帝国の光』内部で、時間稼ぎを行ったりしたお陰だ。

熱心だった、自称コミュニスト共が、内部崩壊し始めているのだ。
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