The previous night of the world revolution~T.D.~
成程ね。

ヒイラが、あんなに『光の灯台』の完成を急ぐ訳だよ。

俺が所属する、『帝国の光』の『裏党』は、根っからの革命闘士の集まりだから。

そんなに、意識することはなかったけど。

世間では、もうこんなに、人々の心が離れていってるんだ。

ということは、各地で開催されているという講演会も。

今では、随分参加人数が少なくなってるんだろうな。

実際には、講演会委員なんてやってないので、毎回何人来てるのかは知らないけど。

ヒイラがピリピリしてる訳だな。

どんどん、ルティス帝国全体の、若者達に広がる熱が冷めていっている。

ここで繋ぎ止めておかないと、やがて若者達は、完全に革命精神から離れていってしまう。

今残っているのは、かろうじてまだ革命精神の残滓を残しているものと。

…逆に、人々の心が離れていくにつれ、「自分はあいつらとは違う」と反発し、ますます組織の理念にのめり込んでいく奴らだけ。

今日俺に献金を託した連中もそうだ。

不甲斐ない、生半可な覚悟で『ルティス帝国を考える会』に入った輩とは違う。

自分達は、本気でルティス帝国に革命を望んでいるのだ、という証に。

なけなしの金を、俺に渡してきたのだ。

全く、救い難い奴らだ。

この調子じゃ、各地で集金を募っている派遣員達も、案外暇なのかもな。

ということは、毎日札束ばかり数えているであろうエリアスも。

実は、ルリシヤが同じ仕事をしていたときより、暇してるのかもしれない。

札束より、小銭の枚数数える機会の方が多かったりして。

それはそれで面倒臭いな。

札より、小銭の方が種類多いし。

なんて、エリアスが何をしているかはどうでも良い。

重要なのは、ルティス帝国全体から、革命への意識が薄れていることを実感出来たことだ。

これは…凄く、良いことだね。

「何とか頼めないかな、ルナニア君…」

「…そうですね」

誰が引き受けるか、ばーか。

『ルティス帝国を考える会』なんぞ、そのまま内部崩壊してしまえ。

と、言いたいところだが。

ここは、無難に切り抜けるのが妥当だろう。

「分かりました。そこまでの余裕があるかは、正直微妙なところですが…」

実際、ヒイラに頼んだら、どんな反応をするだろうか。

『ルティス帝国を考える会』に、プチ講演会の為の派遣員を送ってくれ、と頼んだら。

今のあいつじゃ、それどころじゃないと突っぱねそうだが。

奴にまだ理性が残っていたら、『ルティス帝国を考える会』という、ルティス帝国総合大学のエリートが集まるサークルを、邪険に扱ったりはしないだろう。

まぁ、いずれにしても、そんなことは考えても詮無いことだ。

だって俺、エリミアの頼みを聞く気なんて、さらっさらないんだから。

「何とか、頼んでみますね」

「ありがとう…!」

うん、ぬか喜びで悪いな。

「本当に、エリアス君と君は、『ルティス帝国を考える会』の誇りだよ」

「光栄です」

「これからも、暇があればこっちにも顔出してよ。君達が来てくれたら、私達も士気が上がるから」

つまり、俺やエリアスが来なかったら、全然士気はないってことだな?

よし、ますます来るのやめよう。

『ルティス帝国を考える会』も、そろそろ年貢の納め時ということだ。
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