The previous night of the world revolution~T.D.~
帰宅後。

俺は、郵便受けに入った封筒やチラシを取って、自分の部屋に入った。

「…」

…空気が違うな。
 
誰かが、俺のいない間に侵入してきたらしい。

そんなことが分かるのか、って?

分かるもんだよ。自分のいない間に、部屋を荒らされてたら。

厳密には、荒らされている訳ではない。

家探しされてる、と言った方が正しいか?

部屋の中にあるものは、何もかも俺が今朝出ていったときのままだ。

ベッドの上に放っていた、上着の皺までそのまま。

それでも、何人かで部屋の中に入り込んで、あちこち探して回ったであろう…人の気配までは消せない。

家宅捜索なんかしたって、めぼしいものは何も出てこない。

いつ部屋を覗かれても良いように、ちゃんと部屋に置いてあるものは選んでいるからな。

しかし。

家宅捜索が行われたってことは、やはり俺はまだ、ヒイラに信用されていないらしいな。

悲しいことだよ。俺はこんなに、『光の灯台』の研究に「貢献」してあげてるのに。

などと思いながら、俺は何も気づいていない振りをして、部屋に上がり。

役所からの通知…に、見せかけた、ルリシヤからの封筒を開けた。

中に入っているのは、何ということもない、市役所からのお知らせみたいなものだが。

その封筒の中に、こっそりメモが潜ませてあった。

勿論、差出人はルリシヤだ。

「ヒイラはまだ、ルレイア先輩を信用していない。『光の灯台』建設に焦ってるらしい。上手く宥めておいたが、家探しまでは止められなかった。悪い」とのこと。

やっぱり家宅捜索されたんだ。

別にルリシヤが悪い訳じゃないから、謝る必要なんてないのに。

律儀だなぁ。

まぁ、家宅捜索くらい、いくらでもしてくれ。

どうせ、怪しいものは何も出てこないのだから。
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