The previous night of the world revolution~T.D.~
「俺達はそのヒントをもとに、試行錯誤しながら造るしかない。手探り状態なんだよ」

「…同志ルニキス。開発チームのメンバーを選んだのは君だ」

「あぁ、俺だ」

「君が選んだメンバーを集めて、それでも完成させられないなんて、」

「誤解しないでくれ」

俺は、ヒイラを宥めるように言った。

「確かに、開発チームのメンバーを選んだのは俺だ。俺と、サシャ博士の意見を聞きながら選出した」

ちゃっかり、自称博士も巻き込んでいくスタイル。

自分だけ蚊帳の外で、安心させはしないぞ。

俺だって面倒なんだからな。夜泣きの坊やをあやすのは。

「メンバーに非はない。皆優秀な者達だと思っている。それぞれ各分野に秀でていて、更に革命精神溢れる、立派な『帝国の光』の党員だ」

「…それなら、どうして…」

「それでも、だ。それでもあの研究は、一朝一夕で出来るものではないんだ」

「…どういう意味だ?」

よし、食いついた。

「まず、人々を煽動して、ロボットのように自在に動かす装置…。それも、煽動する相手に気づかれないように…。そんな画期的な研究を目論んでいるのが、俺達だけだったと思うか?」

「…!」

「そんな便利な装置の研究は、どの国のどんな機関でも、試しているはずだ。それでも、成功例は聞いたことがない。帝国騎士団だって、俺達よりずっと潤沢な資金と設備を持っているのに、未だに開発には至っていない」

嘘八百である。

シェルドニア王国という成功例はあるし。

そもそもそんな研究、国際倫理に反するとして、大っぴらに研究するものではない。

例え成功していたとしても、公表する訳がないし。

そして成功しているのなら、既にその国の人々は、無意識に洗脳下にあるのだから。

「私達洗脳されました」と公表出来る訳がない。当たり前だが。

ついでに言うと、俺の知る限り、帝国騎士団では、人々を洗脳する機械の研究などしていない。

過去にはあったのかもしれないが、世の中に出てきていない辺り、多分失敗したか、断念したのだろう。

そして、今の帝国騎士団が、そのような機械の研究に着手するとは思えない。

シェルドニアの連中や、この頭のイカれたヒイラと違って。

帝国騎士団には、ちゃんと理性というものがあるからな。

それに、ルティス帝国の女王であるアルティシアも、そんな末恐ろしい研究に、手を出すほどの度胸はない。

前の、ローゼリア元女王なら、万が一でも有り得たかもしれないが。

それでも、オルタンス達が止めただろう。

まぁ、あれだ。

人を洗脳して、無理矢理自分の言うことを聞かせて、国を支配しよう、なんて。

まともな神経してたら、まずそんなことは考えないからな。

つまりヒイラは、まともじゃないってことだな。

今更だが。
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