The previous night of the world revolution~T.D.~
党員が減ってきてる…か。

…凄く良い兆候じゃないか。

ヒイラが、これだけ取り乱して『光の灯台』の感性を急いでいるのは、これが理由か。

時間の問題だとは思っていたが、意外に早かったな。

俺にとっては、二重に良い報告だ。

まず、純粋に『帝国の光』を慕う者が減っているということは、俺達が戦うべき相手が少なくなっているということ。

敵が減るのだから、こちらとしては嬉しいの一言に尽きる。

このまま、どんどん減っていって欲しい。

そして、もう一つ良いことは、

ヒイラが、この重大な危機を、俺に打ち明けてくれたことである。

ヒイラが主催する『裏党』で行われる会議には、勿論俺も毎回しているが。

今に至るまで、はっきりと「党員が少なくなっている」なんて、一言も言わなかった。

俺は薄々気づいていたし、ルレイア先輩を始め、他にも聡い者は気づいていただろうが。

ヒイラの手前、口には出さなかった。

各地にある『帝国の光』の提携組織が、その規模を縮小し始めている。

つまり、人も金も少なくなっているのだ。

人が少なくなれば、『帝国の光』に提供する労働力が減り。

金が少なくなれば、『帝国の光』に供出する資金力も減る。

それはすなわち、『帝国の光』という組織力の低下に繋がるのだ。

ヒイラは、何よりもそのことを危惧している。

こちらも俺にとっては、喜ばしいの一言に尽きるがな。

いずれ、こうなると思っていた。

皆、熱が冷めてきたのだろう。

「党員が…?どういうことだ?」

分かっていながら、俺はしらばっくれて尋ねた。

ヒイラが何処まで俺に本音を打ち明けるか、試してみたかったのだ。

「言葉通りの意味だよ。党員が、それぞれの組織から抜けていってるんだ」

ヒイラは、吐き捨てるように言った。

「そんなことが…」

「元々、革命精神の薄い奴らだったんだ。生半可な覚悟で集まった、烏合の衆だったんだよ」

よく分かっているじゃないか。

「そんな奴らは、いざ本当に革命を起こすときにも、足を引っ張る。革命って言葉に踊らされただけの、夢見がちな馬鹿だ。奴らが抜けていったことには、むしろ感謝してるよ」

と、強がってみせるヒイラ。

この状況で、虚勢が張れるほどの余裕があるのは結構だが…。

その虚勢を削ぐように、俺は石を投下した。

「…でもそんな奴らでも…今いなくなられたら、『帝国の光』にとっては痛手になる」

「…」

案の定、ヒイラは黙り込んだ。

無言は、肯定の意だ。

人がいなくなる。人がいなくなれば、金もなくなる。

つまり、研究を続ける為の資金にも、不足するようになるのだ。
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