The previous night of the world revolution~T.D.~
「とにかく俺達は、一刻も早く、『光の灯台』を完成させなければいけないんだ」

「…」

「俺が、まだ『監視部屋』にいる党員を開発チームに入れることを許したのも、『光の灯台』を早く完成させる為だ」

ルレイア先輩のことだな。

「いくらルティス帝国総合大学の学生と言えど、『帝国の光』に入って間もない党員に、『光の灯台』計画を任せるなんて…。本当は嫌だった」

「…同志ルナニアのことか。そんなに信用ならないか?」

「今のところ不審な動きはないようだが、俺はまだ、彼を心から信用してはいない」

酷い言い草だな。

まぁ、俺が長い時間をかけて勝ち得た、ヒイラの信頼を。

まだ『帝国の光』に入って間もないルレイア先輩が、既に勝ち得ていたら。

それはそれで、俺が切ない。

ヒイラに信用されるには、長い時間が必要なのだ。

「それに、そこまでしてルティス帝国総合大学の学生を入れたのに、まだ『光の灯台』は完成しない…。本当に、彼は戦力になってるのか?」

「大いに戦力になってくれてるぞ?それは保証する」

「…」

疑り深そうな顔だ。

誰も彼も疑ってかかるとは、悪い癖だな。

「前にも言ったし、今日も本人が説明していたが…。彼は俺達が思いつかない観点から、研究へのアプローチを試みている。彼がいなければ、研究は今頃、暗礁に乗り上げていてもおかしくなかっただろう」

「…なら、今は順調に進んでるってことだな?」

「可能な限り、早く完成に近づくよう努力している」

「それでも遅いんだ。これ以上党員を減らす訳にはいかない。新しい入党希望者も、段々少なくなってきてるし…」

「…」

ヒイラの焦りが、手に取るように分かった。

そうか。

そんなに恐れているか。

人々の心が、自分の思想から離れていくのが。

「急ぐんだ。急いで…。でないと、俺の…俺達の苦労が水の泡だ」

「…」

ヒイラ、お前、自分で気づいてるか?

お前は、かつての自分のような、貧しい人々を救う為に、ルティス帝国を変える必要があると、正義の顔をして語っていた。

だけど、今のお前は。

ただ国家転覆を企む、野望と征服欲にまみれた、支配者の顔だ。

そして、その顔はあまりにも…。

「…」

思い出して、俺は目を伏せた。

忠告したいと思って、それもやめた。

無駄だと分かっているからだ。

それに俺は、この男の友人ではない。

ヒイラ、お前は俺の敵なのだ。

だから。

「…分かった。急ピッチで、開発を急ぐ」

「頼む。『帝国の光』の命運は、『光の灯台』に懸かってるんだ」

そんなやり取りをして、ヒイラは研究室から出ていった。

残ったのは、俺と自称博士のみ。

「…急がなければならないな、博士」

「あ、あぁ…」

こんなときもどんなときも、頼りにならない博士は、この気のない返事。

心配するな、そもそもあんたには、何も期待していない。

研究を持ちかけた者として、研究のストップを言い出せるのも、あんただけなんだがな。

そんな度胸がある奴だとは思ってないから、安心してくれ。
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